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2024.03.26
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[SIerを訪ねてvol.42]周辺機器の開発力を生かして/高井精器

社内も自動化に積極的

本社工場の射出成形機に協働ロボットで部品を供給する

 同社の自動化への取り組みの歴史は長い。高井社長は「生産量を上げるため、1984年にプレス機で夜間無人運転を始めたのが、わが社の自動化の一歩目だった」と振り返る。その後も製造工程の自動化を進めていく中で、ベアリングの生産工程に協働ロボットを導入した。  同社はベアリングと樹脂を一体成形した樹脂巻きベアリングを製造しており、その製造工程で射出成形機への部品供給を自動化した。ユニバーサルロボットの協働ロボットが、内製の部品供給装置からベアリング部品を一度に2個つかみ、射出成形機にセットする。成形中に、協働ロボットは次のベアリング部品を取りに行く。ロボットハンドは、ベアリングの搬送に向くように3Dプリンターで造形した。

協働ロボットを活用して製造した樹脂巻きベアリングを自社製品として販売する

 高井陶吾営業課長兼開発課長は「成形には数十秒かかる。部品供給を手作業ですると、機械にずっと付いていなければならず、成形中に別の仕事をするのも難しい。数十秒ごとに部品を供給できれば良いため、協働ロボットの動作スピードでも十分に間に合う」と話す。  社内からも好評で、「次は部品供給装置にベアリングを補充するのを自動化できないか」との声も上がるほど、生産現場も自動化に積極的になっている。  製造工程を中心に自動化を進めてきたが、部品の検査や梱包などは人手作業が多く、自動化する余地はまだまだあるという。リテーナーとシールド面を合計して、月当たり約1500万個を製造している。部品の向きをそろえて全数を目視検査した後、梱包し出荷する流れで、作業員の負担が大きい。  そうした課題を解決するため、社内用の外観検査システムや、部品を自動で整列するシステムの開発にも注力している。高井課長は「人手不足や原材料費の高騰などを考えると、生産の効率化は必須。他社も同様の悩みを抱えているため、わが社のノウハウを生かして現場の自動化に貢献していければ」と語る。

開発や設計のスピードアップを

「他社と協力関係を構築しながら開発を進めていきたい」と語る高井研吾社長

 高井社長は今後の課題に、開発人材の強化を挙げる。「自動化システムは顧客との仕様のすり合わせや現場での動作の調整など、どうしても時間がかかる。開発や設計をスピードアップできるよう、人材の採用や育成に力を入れていく」と意気込む。  また自社のみで開発を進めるのではなく、人工知能(AI)を活用した異常検知ソフトウエアを得意とする企業などと連携し、広く協力関係を構築しながら今後も開発に臨む。

(ロボットダイジェスト編集部 水野敦志)

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