[特集 物流機器は新世代へvol.6]物の流れを止めないためにマテハンで重要なこと/オークラ輸送機
トラック運転手の環境改善に貢献
トラックローダ TL-3Fがトラックにパレットを2つ同時に積み込む(提供)
また、物流業界ではトラック運転手の労働環境や人手不足の改善が深刻な課題となっている。そこで、同社が提案するのが、トラック用の積み込みシステム「トラックローダ」だ。
トラックローダは、荷物が乗った複数のパレットをまとめて一度にトラックへ積み込める。これまでフォークリフトなどを使っていた作業を自動化でき、効率を上げられる。
積み込み作業の時間を短縮できれば、その作業中や順番待ちによるトラックの運転手の待機時間を減らせる。
新開発した「トラックローダTL-3F」は小型のタイプで、さまざまな長さのトラック荷台に対応できる。2つのパレットを同時に持ち上げた状態で、専用のレール上をローダーが移動し、トラックに横付けして積み込む。
例えば、フォークリフト2台で40分掛かる積み込み作業を、同システムを使えば12分に短縮できる。大庫専務は「トラックローダは発売から20年以上たつ製品。新開発のTL-3Fは、小型にして汎用性を高めたことで、現在の物流業界の課題解決にも大きく貢献できる」と話す。
現在は積み込み作業にしか対応していないが、荷下ろしもできる製品の開発を進めている。21年度中の製品化を目指す。
一番の強みは…
物流向けでは他にも、「ユニソーター」など荷物を仕分けるソーター類や立体ピッキングシステム「Quick Shuttle(クイックシャトル)」などの豊富な種類の設備があり、顧客の課題に応じて幅広い提案ができる。
こうした個々の設備のカスタマイズ対応も重要だが、工場や倉庫全体のマテハンを考えると、これら設備で提案できる工程と次の作業工程をつなぐことも重要だ。これには一般的にコンベヤーが使われる。そして、このコンベヤーのカスタマイズこそが、同社の強みでもある。
オークラ輸送機は1927年の創業。当初は鉄工所で機械部品の加工がメインだったが、50年には自社製品として動力の要らないコンベヤー「コロコンキャリヤー」を発売した。55年に専業メーカーとなり、それ以来ノウハウを培ってきた。
運ぶ物の種類や形状、重さ、距離によって搬送条件が異なるため、コンベヤーには多彩な種類がある。同社は用途別にコンベヤーの標準化を進めてきた。
「コンベヤーは顧客の要望や施設の規模に合わせて敷設する。製品を標準化した上で、それをどのように適切に配置するかが問われる。これまで培ってきた対応力には自信がある」と大庫専務は胸を張る。
今後はモノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)などを使った提案も増やす。その一つがマテハン設備の故障予知サービスだ。
マテハン設備が故障して止まると、顧客の工場や倉庫の物流全体が止まってしまう。現在、同社は全国にサービス網を張り巡らせて、サービススタッフを派遣して故障やメンテナンスに対応する。故障予知サービスを提供できれば、より迅速で適切な対応をでき、顧客の設備を止めずに済む。
「顧客の物流を止めないのが何よりも大切。最新の高度な技術を取り入れながら、製品品質やサービス体制の向上に日々取り組みたい」と大庫専務は意気込む。
(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)