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2019.06.14

連載

[注目製品PickUp!vol.14]リーズナブルな単軸・直交でここまでできる【後編】/アイエイアイ「ロボシリンダー」

内製にこだわり、独自構造も開発

ボディーとスライダーの間にある鋼球が循環して摩擦を減らす直動ガイド機構

 電動アクチュエーターの発売当時、一部の部品は自社で製造していたが、直動ガイドやボールねじなど大半の基幹部品は他社から購入していた。これを内製に切り替えたのは95年の「ISシリーズ」からだ。

 内製によりコストダウンを図る狙いもあったが、外部からの購入部品を組み合わせるだけでは、思い描く製品を形にできないとの思いもあった。
 当初は社内でも「基幹部品の内製化は難しい」との声があったが、設備メーカーと一緒に一から専用設備を作り込み、さまざまな試行錯誤を経て、3~4年後にやっと納得のいく品質の物が作れるようになった。

 内製することで独自構造の部品も作りやすくなった。例えば直線運動をガイドする直動ガイド機構では、アルミと鉄を組み合わせた独自構造で特許を取得。軽量でありながら剛性の高い構造を実現した。その他、高速動作時にアクチュエーター内部にあるボールねじの振れを抑える「中間サポート機構」も開発した。
 こうした特徴的な構造や技術はロボシリンダーにも受け継がれている。

どう作る、驚異の90万アイテム

「他社にはまねできない生産体制」と言う中村秀和次長

 徹底的な内製化により、製品サイズと納期のコントロールもしやすくなった。驚くべきはそのラインアップ数だ。
 製品バリエーションが豊富であることは前編でも触れたが、各部品の仕様の違い、細かいサイズの違いなどを掛け合わせると、同社が製造する電動アクチュエーターは90万種類にも及ぶ。ロボシリンダーだけでも数十万種類のバリエーションがある。
 在庫品は持たず、顧客からの注文に応じて製造する。納期は一般的な製品で約2週間、最短で翌日出荷の製品もあるという。

 超多品種でサイズなどが自由に選べるのは販売には有利だが、製造するのは大変だ。一つ一つ異なる製品を製造しなければならないので、現場でのミスが発生しやすい。アイエイアイではこうしたミスを防ぐため、約10年前に「電子チェックシート」と呼ぶ独自システムを導入した。
 これは、コンピューターを使った作業者への作業指示と、電動工具やデジタル式測定器を連動させたシステム。例えば、電動ドライバーのトルクアップ(ねじ締めの完了)の回数を監視し、4カ所ねじ止めが必要な製品なら、4回トルクアップしなければ次の作業指示が画面に表示されない。こうしたシステムにより、人為的なミスを防ぐ。

 「価格や製品バリエーション、独自の構造、短納期など、当社の強みの源泉はこの生産体制にある。電動アクチュエーターの生産にここまで投資しているのは、専門メーカーの当社だからこそ。他社では決してまねできない」と中村次長は話す。

100万軸体制を目指す

スカラロボットとの組み合わせなど、多彩に活用できる

 ロボシリンダーだけの販売軸数は公表していないが、ロボシリンダーを中心とする同社の電動アクチュエーター販売軸数は年々右肩上がりだ。1986年に最初の電動アクチュエーターを発売し、累計販売軸数が10万軸を超えるまでは10年以上かかったが、99年にロボシリンダーを発売すると2003年に累計30万軸を突破。11年に100万軸、16年に200万軸を達成し、今年中に300万軸に到達する見通しだ。

14年に建設した富士宮工場

 需要の増加を受け、生産体制の増強に力を入れる。従来からの本社工場に加え、14年に静岡県富士宮市に新工場を建設した。その富士宮工場は現在、生産力を引き上げるため増築中だ。さらには本社と同じ清水区内に庵原工場を新設し、生産能力をますます増強する予定だという。

 「現在は年間30万軸ほどの生産量で売上高300億円台だが、今後年間100万軸を供給できる体制を整え、世の中の自動化に貢献していきたい」と中村次長は語る。

――終わり
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)



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