「産業用ロボットってどう使う?」記者が実際にやってみた
「どうぞ」と言われてやってみた
説明員の「どうぞ」との声に促され、早速やってみた。
シートを持ったロボットのアームが、自動で向きを変えながら自動車に向かって進む。シートをはめ込む溝の上まで移動すると、ポーン!との音が鳴るのと同時に「コミュニケーター」と名付けられたハンドル右上のスイッチが赤く点灯する。
スイッチを押しつつハンドルを左右に揺らしながら下方に押し込むと、シートを溝にはめる時のゴツゴツとした感覚がハンドルにも再現される。
実際に自分の手でシートを溝に押し込む感覚だ。シートが溝に正しく設置されると、ハンドル左上のスイッチが点灯して知らせてくれる。
これまでは自動車の組立工場で、1つ数kgはありそうなシートを抱えて車内に運び、不安定な姿勢のまま据え付けてきた。この作業がロボットでできる。シートがうまく取り付けられたのかも感触で分かる。
ロボットの動作を変えればどんな車種にも対応できる。人はただハンドルを握って微調整するだけで良くなれば、こんな楽なことはない。
「便利なものだ」と感心した。
宇宙船のコックピットのよう
その隣では、自動車の車体を塗装する作業を再現した。
塗装作業と言えば、塗料が体にかからないよう特殊な作業着を着て、マスクなどを装着しなければならない。ロボットを使って離れた場所から塗装できれば、働く環境も大きく改善できる。
会場には、座席の左右には塗装用のロボットと塗装する車体の向きを操作するコントローラーがあり、まるで子どものころに見たSF映画に登場する宇宙船のコックピットのよう。
ゴーグルを着けると、目の前にロボットと車体の一部が映し出される。
左手の球体を回すと車体が回り、右手の引き金の付いたアームを動かすと腕や手首と同じようにロボットが動く。引き金を引くと塗料が噴射される仕組み。
ゲーム感覚で楽しく作業ができるが、やってみるととても難しい。まず左右の手で別々の動きができない。
一連の動作は記録されており、終わった後で再現が可能。自分の動きを見ると、ロボットと車体が同じところを行ったり来たり。無駄な動きがどれだけ多いか分かる。
説明員によると「ベテラン作業者の無駄のない動きを記憶させれば、その人がいなくても同じ動きで塗装を自動化できるようになる。さらに新人のトレーニングにも活用できる」という。
――後編に続く
(ロボットダイジェスト編集部)