• インタビュー
2022.02.02
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産ロボをスマホ並みに/Mujin 滝野一征CEO インタビュー

FA市場の開拓にも本腰

「今後FA向けにも注力する」と話す滝野一征CEO

――FA向けの展望は?  物流は事業拡大に向けた筋道を付けられたので、次はFA分野の開拓に本腰を入れます。製造企業にはロボットのシステムインテグレーション(SI)に対応できる生産技術部門があるため、MujinコントローラやMujin3Dビジョンなど機器単位で提供するケースが多くなります。これらの機器を進化させ、より高度なシステムをより簡単に構築できるようにします。物流向けではソリューションとしてシステム全体を提供し、SIの経験も積んできました。その経験や知見を、製品開発にフィードバックします。 ――製品にはまだまだ進化の余地がある?  まだまだ進化させる必要があります。われわれのロボットシステムは「ロボットの使い方が分かっていて、投資対効果の計算ができる人が導入すれば、利益を得られる」といった段階です。これを必需品にしたい。導入するのが当たり前で、導入さえすれば確実に投資以上の利益が得られるような存在です。現代の必需品であるスマホを買う際、メーカーや機種を選ぶことはあっても、持つか持たないかはそもそも考えないでしょう? あれば便利で役に立ち、なければあまりにも不便。稼働時間や採算を検討するまでもありません。工場設備で言えば、プログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)に近いかもしれません。ロボットもそういった存在にしていきたい。 ――生産技術部門がSIを担えるFA向けにはシステムではなく機器単位で提供するとのことですが、製造業では生産技術系の人材や、SI人材が不足しているとの話もよく耳にします。  製造企業の生産技術部門でも、委託を受けてシステム構築をするSIerも同様ですが、現在のロボットSI業務には付加価値の低い作業が多くあります。こうした作業から技術者を解放し、付加価値の高い業務に集中させて、SIを「付加価値の高い仕事」、「もうかる仕事」にすることが必要でしょう。

外乱光の影響をより受けにくくするなど、2021年にも進化したMujin3Dビジョン

――そのためには?  例えばパソコンを例に考えると、昔はマウスをつなぐだけでも「プロトコル(通信規格)はどうなっているのか」などややこしい問題がたくさんありました。しかし現在はつなげば自動で認識されます。だからこそ技術者は、より便利なソフトウエアの開発など付加価値を生み出す仕事に集中でき、産業として発展できました。ロボット業界でも同じです。われわれがよりシステム構築しやすい機器を開発し、SIerはより付加価値の高いロボットのアプリケーション(応用方法)の開発に集中することで、産業全体が発展していけばと考えています。デジタルトランスフォーメーション(DX=デジタル技術による業務革新)などでソリューションの幅は広がっており、ソリューションの提供者であるSIerの重要性は高まるばかりです。 ――課題はありますか?  まずは「ムジンのシステムは高い」という誤解を解くことですね。どんな製品でも一緒ですが、最初は高価でも、普及すれば徐々に価格は下がります。ムジンのロボットシステムも、物流向けで納入台数が増えたことで調達力が増し、コストが下がっています。システム全体で3年前と比べて3割は下がっており、競合と比べて価格で負けることは少なくなってきました。製造業界で「技術にも価格にも優れるのがムジン」とのイメージを浸透させていきたいですね。

(聞き手・ロボットダイジェスト編集長 八角秀)

滝野一征(たきの・いっせい) 米国Soka University of Americaを卒業後、イスカルジャパンを経て2011年にカーネギーメロン大学の研究者だった出杏光魯仙(デアンコウ・ロセン)博士と共にMUJIN(現Mujin)を創業。大阪府出身の37歳。

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