[SIerを訪ねてvol.12]人材派遣業から生まれた異色のSIer【後編】/アウトソーシングテクノロジー
上位のシステム開発まで一貫対応
同社は工場を持たないファブレスSIerだ。設計やソフトウエア開発は同社が担い、部品加工などは協力会社に依頼している。「自前で部品加工をしようとしても、一朝一夕でできることではない。加工のノウハウを積み上げるのを世間は待ってくれない」と話す。それぞれの得意分野で分担する方針だ。 SIer事業の担当以外も合わせると、同社には数千人ものエンジニアが在籍する、その技術力をどう生かすかがテーマの一つ。製造工場を持たない代わりに、ソフトウエアの開発能力は高い。 「通常、SIerが担うのは物を作ったり運んだりするロボットシステムの開発だが、それだけだと生産を管理しデータを集めることにはつながらない。わが社では、受注処理や在庫管理、生産管理を含めた上位のシステムを開発することもできる」と新センター長。 さらに「製品の製造だけでなく、現場への生産の指示や、ロットナンバーを発行するようなシステムの開発も可能」と言う。
グループの力でSIer事業を育てる
今後の課題は人材育成だ。若手エンジニアのスキルが向上し、次の世代を教育できるようになれば、さらに陣容を強化できる。 「若手エンジニアたちは機械を制御するプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)のプログラミングを経験しているところだが、今後は自動化のための機器のコーディネーションを一緒にやっていこうと考えている。機械の知識を高め、制御や生産システムを学び、メーカーについても知っておかなければならない。少しずつステップアップしてくれたらいい」と言う。 最終的には顧客のニーズを元に仕様書を書けるようになるのが目標だ。 現在、足元で引き合いが増えている食品工場では、カカオマスを輸入してチョコレートに加工するような、比較的上流の加工工場からの問い合わせが多い。その他、めっき業者や塗装業者など、中小規模の専門的な加工会社からも自動化の引き合いがある。 人材の成長に加え、前編で紹介したネットワーク構想を実現できれば、いろいろなニーズに細やかに対応できる。 また、アウトソーシンググループにはさまざまなグループ企業がある。「例えば人に見せる工場を志向するなら、システムにエンターテインメント性が求められるかもしれないし、イメージ戦略も必要だろう。そういった領域にも幅広く対応できるのがグループとしての強みだ。立ち上げたばかりの関西開発センターのSIer事業を、グループ全体に貢献できる規模に育てたい」と新センター長は意気込みを語る。
――終わり (ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)