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2024.02.01
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[ロボットが活躍する現場vol.33] ロボット切削で鋳物の砂型を直接造形! 次世代鋳造技術を共同開発/オークマ、木村鋳造所

省人化・リードタイム短縮など多くのメリット

中子挿入ロボット(右奥)と、工程間搬送をするAGF(中央)。

 このシステムを導入するメリットは多い。  木型で作った形状を転写して砂型を作る従来の鋳造法と比べ、必要人員は4分の1に省人化でき、夜間や休日の連続稼働も可能だ。  リードタイムは2週間から3日に短縮でき、製造コストは従来と同等以下で収益性は大幅な向上が見込めるという。  また、形状を砂型に転写するための木型や外側の型枠が不要になることも大きなメリットだ。木型や型があるとそれらを保管するためのスペースや、管理が必要になる。  今回のシステムなら、必要時にデータからその都度砂型を製作すればよいため、木型も型枠も不要だ。  「鋳物はリサイクルが可能でサステナブル(持続可能)な製品だが、鋳造業界はどこも人手の確保に苦労している。このシステムなら人手不足を改善できる」と木村鋳造所の木村崇専務は言う。

鋳物業界の課題を解決

オークマの一木洋介生産技術部長(右)と木村鋳造所の木村崇専務

 今回の共同開発は、オークマが鋳物調達の安定化を求めていたことが一つのきっかけだ。  工作機械には大型・中型から小型までさまざまな鋳物部品が使われるが、国内の鋳造会社は1995年から2019年の間に、2791社から1373社へと半減している。鋳造業界は大半が従業員4人以下の小規模な企業で、今後も減少が懸念される。これからも鋳物部品を安定的に調達できるよう、鋳造業界の課題を解決したいと考えていた。  一方、木村鋳造所は、これまでも先進技術の導入や開発に積極的に取り組んできたが、27年の創業100周年に向けてさらなる鋳造技術の革新を求めていた。  両社は長年取引関係にあり、利益が一致したため、今回の共同開発に至った。「お互いのニーズの把握やデータの共有など、信頼関係があったからこそ開発できたシステム」と両社は口をそろえる。   木村鋳造所ではこれまで、オークマ向けには大型の鋳物部品を供給していたが、今回の開発をきっかけに同システムで製造した小物部品も供給を開始した。  オークマではこの技術を自社の協力工場などで独占するのではなく、国内の多くの鋳造会社に広めたい考えだ。  「鋳造は日本の製造業にとって極めて重要な産業の一つ。今回開発した技術なら、人手不足の改善や付加価値の向上など、鋳物業界が抱える課題の解決に貢献できる。ぜひとも国内の多くの鋳造会社に活用してもらえるようこの技術をさらに育成したい」と一木部長は語る。

(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)

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