[SIerを訪ねてvol.64]知見生かして三品産業の自動化を推進/スキルエンジニアリング
ロボットシステムの構築を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)を紹介する連載企画「SIerを訪ねて」。今回は、幅広い産業向けに自動化設備や自動化システムを設計・製作するスキルエンジニアリング(三重県伊賀市、鴻池直弘社長)を取材した。現在、売上高の半分を占めるのが医薬品、食品、化粧品の三品産業向けのシステムだ。三品産業で扱う対象物(ワーク)は、多品種であることやばらつきが多いなど特有の難しさがある。同社はセンサーを駆使して汎用性が高く使いやすいシステムを構築する。
金属から樹脂まで幅広く
同社にはシャンプーやヘアトリートメントなどの頭髪用化粧品を製造するグループ企業があり、グループに納入する自動化システムの構築を多く手掛ける。近年はこの他にも三品産業向けの受注が増え、今では売上高の約半分を占めるという。
中西哲也取締役は「特定の産業に特化していないからこそ、創業以来の知見を生かして顧客の要望に柔軟に応えられる。金属から樹脂まで幅広いワークに対応できるのが強み」と胸を張る。
顧客から指定がない限りデンソーウェーブ(愛知県阿久比町、相良隆義社長)のロボットを使うが、要望に合わせてその他メーカーのロボットにも対応する。システムのうち約9割は単軸ロボットを組み込んだもので、スカラロボットや垂直多関節6軸ロボットを活用したシステムを構築した実績もある。
センサーを駆使する
三品産業は他の産業と比べて多品種少量生産の製造現場が多く、自動化が遅れている業界の一つだ。
中西取締役は「三品産業の中でも大手企業は少しずつ自動化が進みつつあるが、それ以外の企業はコスト面や工場のスペース上の問題からまだまだ導入が進んでいない。加えて、多品種少量生産向けのシステムには高い汎用性が求められるため構築が難しい」と語る。
同社ではセンサーを駆使したシステム構築を得意とする。化粧品業界で扱う樹脂製のボトルを例にとれば、底面が円形や四角形、六角形、八角形などさまざまな形状がある上、金属ワークと比べて寸法精度のばらつきが大きい。
さらに、ボトルに充てんする液体は無色透明から色付き、オイル状と、色や性質が多岐にわたるため、1種類のセンサーでは多品種のワークを識別できない。
中西取締役は「数種類のボトルにラベルを巻く汎用システムを構築した際には、ボトルの側面やキャップ、ノズルの形状をそれぞれ識別できるセンサーをさまざまな角度に複数搭載し、オペレーターがワークに合わせて自由にセンサーを選べるようにした」と説明する。
また、システムの導入現場を見学して状況を詳細に把握するよう心がける。「客先の担当者が現場での実務経験者とは限らないため、できるだけ実際に製造現場を見て、困り事の把握や設置スペースの確認に努めている」と中西取締役は話す。
即戦力として使ってもらう
同社は出荷前に社内でシステムを連続稼働させ、「バグ出し」をしてから納品する体制をとる。
中西取締役は「社内ではシステムが組み上がった段階での完成度が50%程度とよく言います。バグを出し切って100%の状態で納品することで、導入後すぐに戦力として使ってもらえる」と力を込める。
将来的には三品産業向けシステムのパッケージ発売を視野に入れるとともに、三品産業の製造現場を無人化する「究極の省人化」も模索する。すでに社内での検証も進めており、産業用ロボットを組み込んでパウチの供給から内容液の充てん、キャップ締め、搬出用レーンへの搬送まで一貫して自動化するシステムを構築。まずはグループ企業への展開を目指す。
中西取締役は「現状のシステムだと4人から3人、3人から2人のように人手を減らせても完全な無人化は難しい。スプレー式ボトルの場合、液体を吸い上げるストロー部分がばらばらの方向を向いて通い箱に積載されている。このような三品産業特有のワークをロボットアームで正確に安定的にピッキングできるようになれば、“究極の自動化”を実現できるかもしれない」と展望を語る。
(ロボットダイジェスト編集部 平川一理)

