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2023.01.27

連載

[SIerを訪ねてvol.31]経験生かして金属加工に特化/山本金属製作所

ロボットシステムの構築を担うシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)を紹介する連載企画「SIerを訪ねて」。31回目の今回は、工作機械を使った金属加工向けの自動化システムを提案する山本金属製作所(大阪市平野区、山本憲吾社長)を紹介する。1965年の創業時から金属加工を手掛けてきた同社が積み上げてきた経験やノウハウを武器に、製造現場の省人化や省力化をサポートする。

得意分野で生き残る

 山本金属製作所は1965年の創業以来、金属の受託加工や工作機械の周辺機器の製造など一貫して金属加工に関する事業を手掛ける。ロボット事業に参入したのは約10年前。ロボットシステムを開発する拠点は大阪市平野区の本社工場にあり、開発したシステムを岡山市北区の岡山研究開発センターで実機検証する。

岡山研究開発センターでは工作機械とロボットを組み合わせた自動化システムで金属の受託加工をする(提供)

 同社は金属加工で培った経験を生かし、工作機械による金属加工に特化したロボット自動化システムを提案する。技術開発部ロボティクスグループの山本隆将課長は「他のロボットSIerと差別化を図らないとロボット業界で生き残れない。三品(食品・化粧品・医療品)産業など、これまでの経験が生かしにくい分野で挑むのでなく、得意分野の金属加工に一点集中して勝負する」と語る。
 金属加工の分野で勝負するために、ロボットをより効率的に使える加工工程や加工中の異常検知システムを提案する他に、現場に合わせた省スペースな周辺機器を開発するなど機械加工全体での最適化を図る。

ジェネレーティブデザインのロボットアーム部材

従来のロボットアーム部材(左)とジェネレーティブデザインを採用したロボットアーム部材

 より質の高いシステムインテグレーションをするために開発したのが、ジェネレーティブデザインを採用したロボットアーム部材だ。ロボット先端に取り付けてアームを延長する部材の開発に2021年から取り組み始めた。
 ジェネレーティブデザインは設計手法の一種で、機能や材料、製造方法など設計者がソフトウエア上に入力した情報から、人工知能(AI)が最適な設計を生み出す。
 「ジェネレーティブデザインを取り入れると空洞の多いデザインになり、従来の物より軽量化できる。外観が従来品よりスタイリッシュになるのも特徴の一つ」と山本課長。

山本金属製作所の工場では、アームを独自部材で延長して使う(提供)

 同社が開発したロボットアーム部材は、従来の物より重量が軽くなる分、ロボット本体の可搬質量を小さくでき、ロボットシステム全体の開発費用を抑えられる。また、AIが設計を担い3Dプリンターで製造することで、設計から完成にかかる時間を短縮する。
 「ただ、耐久性は未知数。わが社の工場に耐久テストを兼ねて導入したものは従来の物より75%軽く、よいテスト結果が期待できそうだ。実際に使いながらブラッシュアップし、いずれはシステムインテグレーションにも組み込みたい」と山本課長は話す。

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