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2022.08.22

インタビュー

物流自動化の局面を変えねば、やがて廃れる/ギークプラス 加藤大和社長(1/3)

物流ロボットを製造する中国メーカーの日本法人、ギークプラス(東京都渋谷区)が経営方針の転換を進めている。今年4月に就任した加藤大和社長の下、世界でトップクラスのシェアを持つ無人搬送車(AGV)「EVE(イブ)」などのハードウエアの提供にとどまらず、倉庫の管理システムなどソリューション事業にも注力し始めた。加藤社長は「物流自動化は次の局面を迎えている。旧態依然の販売方法のままでは、業界全体が廃れる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

品物の売り方が変わった

一般的な物流倉庫のイメージ

――加藤社長は物流業界に携わって17年目と聞いています。新型コロナウイルス禍で業界はどのように変わりましたか。
 物流のあり方は大きく変わりました。コロナ禍前の10年分に相当する進化が、コロナ禍以降は半年か1年単位で続いている感覚です。

――具体的には。
 まず、この3年ほどで、消費者が物品を購入する場所が変わりました。以前は、店舗での購入が多かった。しかし、コロナ禍の外出制限などを受け、インターネット上での電子商取引が急速に増加しました。大手の通販サイトは当然ですが、消費財メーカーでもインターネットを通じた直接販売が相当増えています。つまり、販売者の目線では、コロナ禍は売り方が変わった期間でした。そして、売り方が変わると当然、物流や在庫管理の方法も変わります。コロナ禍の当初は正直、外出制限などが解かれると店舗販売が主流に戻ると思っていました。しかし、今では世間にインターネット販売が完全に定着したと感じます。

――物流向けの自動化機器の市況はいかがでしょうか。
 コロナ禍になり、当初は設備投資が一気に鈍化しました。設備投資は将来が見えてないと踏み切れないので、当然と思います。その後は回復傾向です。今年の2、3月からは、わが社も多くの引き合いを具体的にもらっています。

ハサミやカッター、のこぎりと同じ

「EVE(イブ)」シリーズで運ばれてきた物をピックアップする作業者

――物流向けの自動化機器には、多くの種類があります。その中でも特に好調な機器やシステムはありますか。
 おそらく、どの方式も引き合いが多い状態です。それぞれに特徴があるので使い分けるのが大切と考えます。例えば、「切る」作業を考えます。道具は、ハサミやカッター、包丁、のこぎりなど多くの種類があります。その中で、切る対象物や大きさ、状態などに合わせて適切な道具を判断して使います。物流現場も同じ話です。

「EVE(イブ)」シリーズの作業ステーション

――なるほど。
 わが社では、専用棚や荷役台(パレット)の下に潜り込んで搬送するAGVの一種、自動棚搬送ロボット「EVE(イブ)」シリーズを展開しています。AGVが作業者の前に、ピックアップする製品を載せた棚やパレットを運んできます。一番の強みは柔軟性です。倉庫内に棚を自由に配置できるため、拡張しやすいです。AGVが走行できる環境であれば、既存施設をそのまま使えます。構想から運用開始までが短期間で、他の設備なら稼働まで1年程度かかるケースが多いですが、わが社のシステムなら長くても6カ月ほどです。また、比較的安価で構築できます。今まさに、人が棚の間を歩き回って、商品をピックアップしている現場に向きます。

――もう1つの主流は、レール状に専用の棚を構築する自動倉庫ですか。
 はい。自動倉庫は圧倒的な物量を収納でき、処理能力も早いのが特徴です。大量に同一製品を保管して、一度に大量に出すような消費財メーカーの倉庫などに向いています。ただ、一度構築するとレイアウト変更が難しく、運用開始まで時間が掛かります。立ち上げまで1年半かかる大規模な事例も珍しくない。賃貸倉庫の場合は、物を保管してないのにシステム構築期間も賃貸料が生じます。

――まさに表裏の関係です。
 不確実性の高い現代では、10年後や20年後に今のビジネスがそのままの形で継続できるか分かりません。変化に柔軟に対応できる物流現場が必要です。そうなると棚を搬送するAGVの方が有利です。しかし、物を保管できる量や入出庫の処理量は自動倉庫と比べて小さく、そして今まさに圧倒的な物量に苦慮する顧客が多い。そこで、双方の良いところ取りをした「POP PICK(ポップピック)」を今年6月に発売しました。

――ポップピックの特徴とは(次ページへ続く)

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