生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.10.01

インタビュー

「仕事は楽しんでやるもの」、産ロボから総合ロボメーカーへ /川崎重工業 高木登ロボットディビジョン長

今年4月に川崎重工業のロボットディビジョン長に就任した高木登執行役員。「ロボット市場は今後とにかく伸びる。しかし、従来からある市場はそれほど大きくならない」と新市場開拓の重要性を指摘する。商品企画部を新たに立ち上げた高木執行役員は「仕事は楽しんでやるもの。そうでなければいい結果は生まれない」と言う。

社内にエンジニアリング機能

――御社の強みはどこにありますか?
 社内にエンジニアリング機能を持っているため、ロボットだけでなくソリューションまで提供できることです。常に顧客と直接会話をしているので本当の需要が引っ張り出せます。また、わが社は航空機、船舶、二輪車など多様な産業を手掛けているため、そうした分野で蓄積された技術を使えるのも大きな特徴です。もっと言えば、社内の各ディビジョンが最初の顧客なんです。船を作る工程で「ここを自動化したい」と相談されたら、それに合ったソリューションを作ります。結果的に会社中がロボットのショールームになるわけです。社内の要望に応えていると自然に市場調査ができてしまいます。

自動車向け溶接システムなどに使われる川崎重工業のロボット(写真は同社ショールームのデモライン)

――足元の市況はいかがでしょうか。
 ロボット事業の顧客層は大きく自動車、半導体、一般産業機械の3つに分けられます。自動車はスポット溶接と塗装がメインで、売り上げは比較的安定していますが、新型コロナウイルス禍で設備投資がかなり後ろにずれこんでいます。半導体は売り上げも安定しており、足元もそれなりに活況です。一番浮き沈みが激しいのが一般産業機械ですね。競争も激しいですが、伸びる可能性も大きい。わが社は「産業用ロボットメーカーから総合ロボットメーカーへ」を合言葉にしています。今までロボットが使われなかった業界、分野への提案を強化しています。

川崎重工業の双腕スカラ型協働ロボット「duAro(デュアロ)」(提供)

――従来ロボットが利用されてこなかった分野への提案ですか。
 そのきっかけとなったのが双腕スカラ(水平多関節)型の協働ロボット「duAro(デュアロ)」です。そもそもは電子機器製造受託サービス(EMS)向けに開発したロボットでした。パソコンやタブレットの組み立てや検査など、テーブルサイズの作業範囲で、EMSだけでも相当な規模の市場があると見込んで開発したんです。しかも、協働ロボットですから、大規模なレイアウト変更などがなくても人の作業を代替できると。結果、EMSはもちろん、食品など当初は想定していなかったさまざまな産業分野から多数のお声掛けがあり、活用していただくことになりました。

デュアロによる作業の一例(提供)

――何がヒットの要因でしょうか。
 スカラロボットだったことは大きいと思います。6軸の垂直多関節ロボットを導入しても「ティーチング(動作の教示)が難しい」との声を多く聞きました。垂直多関節ロボットの方がフレキシブルですが、その分使いこなしが難しい。その点スカラは使いやすいのが魅力です。

TOP