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2020.09.30

ジグやチャックで多品種少量生産を自動化/松本機械工業

松本機械工業(金沢市、松本要社長)は、工作機械の周辺機器を製造、販売する。工作機械の一種であるマシニングセンタ(MC)に被加工材(ワーク)を固定するためのジグシステムや、旋盤にワークを固定するのに使うチャックなどを製造する。これら機器とロボットを組み合わせ、多品種少量生産を自動化する提案に力を入れる。

ホルダー交換でさまざまなワークの加工に対応

 松本機械工業のMC向けの「ショートテーパーホルダークランプシステム」(SHC)は、ワークの外段取りや省段取りを通じ、多品種少量生産の自動化を実現するジグシステムだ。
 段取りとは加工前の準備作業を指し、外段取りは工作機械の外で段取り作業をすることを意味する。

 SHCはワークを搭載する「ワークホルダー」と、MCのテーブルに取り付ける「クランパー」からなる。ホルダーをクランパーに挿入することで、ワークをMCのテーブル上に固定できる。

 ワークホルダーはワークの形状に合わせて大きく3つのタイプを用意する。特殊設計も可能で、さまざまなワークを高い精度で把持できる。
 ロボットなどの自動化機器でワークだけを付け替える場合、同じジグシステムで固定できる製品しか加工できない。しかしSHCなら、機外にホルダーを複数個用意し、ロボットやローダーと組み合わせて使うことで、多品種少量生産を自動化できる。

  • 松本機械工業のショートテーパーホルダークランパー(提供)

  • SHCとロボットを組み合わせたイメージ(提供)

パッケージシステムの開発に着手

松本機械工業の爪交換の自動化システム(写真は「メカトロテックジャパン2019」)

 チャックの爪交換の自動化提案にも力を注ぐ。チャックは旋盤向けの機器で、3つか4つの爪でワークをしっかりと固定する。
 従来は人手での作業だった爪の交換を自動化し、顧客の生産性向上を支援する。松本社長は「生産性を落とす要素の一つに、爪交換の作業をはじめとした段取り替えが挙げられる。段取り替えをいかに簡単にするかが大切」と強調する。
 現在は①ロボットを使って爪を一つずつ交換するクイック・ジョー・チェンジ(QJC)チャック「ROBO(ロボ)-QJC」②一度に全ての爪を交換できるオート・ジョー・チェンジ(AJC)チャック――の2つの製品を中心に、チャックの爪交換の自動化を提案する。

 爪交換の自動化には、ワーク固定(チャッキング)の精度や切りくず対策、交換時間の早さが求められる。これらの要求に応える。「製品の安心感や安定性、完成度の高さには自信がある」と松本社長は太鼓判を押す。

 ROBO-QJCはワークの形状に合わせて成形した爪を用意すれば、複数の異なるワークを加工する場合でも、人手をかけずに爪交換の作業ができる。
 また、AJCチャックはベースチャックと交換プレートからなり、チャッキング精度が高く、切りくずが入りにくい独自の構造を採用した。ワーク形状に合わせた爪を交換プレートに搭載し、ベースチャックに付け替えるだけで全ての爪を一度に交換できる。円筒形状だけではなく、四角い形状などのさまざまな形状のワークを固定できる。

注目を集める爪交換の自動化システム(写真は2019年の台湾の展示会「TIMTOS2019」)

 最近は人手不足が深刻で、さらに生産形態も従来の大量生産から変種変量生産にシフトしつつある。
 こうした状況下で、変種変量生産に対応できるROBO-QJC、AJCチャックは大きな注目を集め、直近の数年間で引き合いや受注、導入実績が増えた。桑本正信営業本部長は「2020年6月に県外移動の自粛が緩和されてからは、自動車業界を中心に少しずつ引き合いが出始めた」と足元の市況を語る。

 将来は、自動化に対応する機器の製造、販売だけでなく、ロボットシステムを構築するシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の機能を強化していく考えだ。
 その一環で、ワークや爪、交換プレートのストッカーとロボットなどをパッケージ化したチャックの爪交換システムの開発に着手した。桑本本部長は「来年の春をめどに形にできれば」と見据える。

(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)

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