ロボットで溶接、塗布!/ロボット活用が進んだ分野に学ぶ
3つの展示会に6万人近くが来場
開催された展示会は「フォトニクス」、「高機能素材Week2018」「第28回液晶・有機ELセンサ技術展(ファインテック・ジャパン)」の3展で、計1200社以上が出展した。3日間で計5万9072人が来場し、会場はにぎわった。
フォトニクスでは、ロボットでレーザー溶接をする提案が多かった。溶接では加工部が高熱になるため、人による作業は危険を伴う。作業中に生じる金属の微細な粒子(ヒューム)の吸引や、加工の熱源に使われるアーク光やレーザー光の紫外線による人体への悪影響などが懸念される。そのため、自動車ボディーの接合などでは、1970年代から産業用ロボットが活用されてきた。
ファナックはパッケージで提案
産業用ロボットで世界トップクラスのシェアを誇るファナックは、スポット溶接を自動化するシステムを展示した。
溶接用ロボットだけではなく、ファイバーレーザーの発振器やロボットに付ける溶接加工ヘッド、加工室などを1つにまとめてパッケージで提案。加工室の内部でロボットが溶接し、ティーチング用のコントローラーを加工室の外側壁面に付けた見た目は、まるで工作機械のようだ。
ロボットは溶接に特化した「アークメート100iD」を使用。現在、加工ヘッドは他社製だが、来年度中には自社での製造を始めて、パッケージの全てを内製する。
ファイバーレーザーの発振器は500Wと小型な物から6kWと高出力なものまで、加工物の厚さや要求する加工スピードに応じて仕様を選べる。「溶接用のロボットシステムは、大企業では導入の歴史が長く実績も多い。ただ付帯する装置も多く、システム構築が複雑なため、中小企業では敬遠されがちだ。そこでパッケージとしてまとめて提案し、導入を簡単にした」(展示担当者)。
ヘッドの工夫でティーチングを軽減
レーザ加工機メーカーのトルンプの日本法人(横浜市緑区、フォルカー・ヤコブセン社長)は、ロボット用のレーザー加工ヘッド「I-PLO 3D」を展示した。出力を調整すればマーキングから溶接まで幅広く使える。
溶接では強固に接合するために、さまざまな角度から接合位置を照射する。立体的な動きのため垂直多関節ロボットが最適だが、ロボットの動作精度が悪いと、照射位置や焦点のずれが生じやすかった。I-PLO 3Dは独自の画像処理技術と補正機能でこのずれを軽減する。あらかじめ対象物の照射位置を設定すれば、画像認識で指定位置を特定し、適切なレーザー光になるように自動で補正する。そのため、照射位置や焦点のずれを軽減できる。
照射位置を自動補正できるため、ロボット本体のティーチングをさほど精密にする必要がなく、ティーチングの手間も減らせる。対象物とレーザーヘッドがある程度まで近づけば、ヘッドが自動で位置を補正して照射する。
「レーザー溶接で手間をかけずに自動化するには、ロボット側の工夫だけでは不十分。周辺機器でもティーチングを楽にできる。特に多品種少量生産が多い中小企業では、加工物の形状が変わってもティーチングの手間が少ないため、導入しやすい」と説明員はアピールする。