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2019.04.24

連載

[SIerを訪ねてvol.7]少数精鋭のファブレス設計者集団【前編】/レステックス

ロボットならではの付加価値も

内外には複数のロボットシステムを納入した(写真は構築中のシステム)

 成形後の「バリ」や「押し湯」と呼ばれる不要な部分の除去作業もロボットが担う。
バリは、上型と下型の隙間などにできる不要な突起で、研磨して除去する。ベルトコンベヤーの上を流れてきた製品の種類や向きをビジョンセンサーで自動的に判断し、製品に合わせたバリ取りが可能だ。研磨すると粉じんが発生し、人が吸い込むと健康被害の恐れがあるが、ロボットならその心配はない。

 また、高温の金属は冷える際に体積が減少するが、体積が減っても製品内部に空洞ができないように、型に余分に入れておく金属が押し湯だ。押し湯は切り離して再溶解して再利用される。人が作業する場合、製品が冷えた後に押し湯を切り離し、再溶解に回すが、ロボットならば熱いまま押し湯を切断して再溶解できる。これにより、再溶解時のエネルギーを削減できる。
 その他、マーキング工程も自動化し、トレーサビリティー(追跡可能性)も確保できるようにした。

現場で鍛えてマルチタスクに

電気配線なども自社でこなす

 ロボットのシステムインテグレーションでは、元請けとなった企業から「電気関係はA社、ロボットに動作を覚えさせるティーチングはB社」といったように、自社の得意ではない分野を他のSIerに委託することも多い。

 しかし同社は、内外のシステムを構築する際、機械と電気の設計から機器の据え付け、配線、ティーチングなど全ての工程を自社でこなした。

ティーチングをするレステックスの社員

 同社の社員は機械設計や電気設計などそれぞれ専門分野を持つが、現場でさまざまな作業をするうちにノウハウを蓄積し、複数の工程をこなせるマルチスキル(多能工)の人材に育った。
 「古くからの知り合いで理解のある取引先ならば現場で試行錯誤ができ、幅広いノウハウを蓄積できる。内外以外の取引先もレステックスの設立前から付き合いのある相手が多く、新人が入った時も『今回は仕事を覚えさせるため、この工程は新人に担当させます』と言えるなど、そういった面ではとても恵まれている」(斉藤社長)。

「単独で全ての工程を担う必要はない」と斉藤圭司社長

 こうした案件でノウハウを積み、ロボットシステムの構築は今や事業の柱の一つとなった。
 現在の悩みは、新規顧客からの案件を受けきれないこと。「小さな会社のため、既存顧客の仕事でスケジュールが埋まってしまう。新規顧客に声をかけてもらうことは多いが、既存顧客をないがしろにするわけにもいかず、悩ましい」(斉藤社長)と言う。現在も半年以上先まで予定が埋まっている。

 自社だけでSIerとして一通りの工程をこなせるレステックスだが、「一つのSIerが単独で全ての工程を担う必要はない。当社はむしろ、その逆を目指している」と斉藤社長は語る。
 後編ではその真意と、新たに取り組み始めた協働ロボットのパッケージ事業について話を聞く。

――後編へ続く
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)



関連記事:[SIerを訪ねてvol.7]少数精鋭のファブレス設計者集団【後編】/レステックス(4月25日アップ予定)

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