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2025.12.08
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[連載コラム:いまさら聞けないキーワード]vol.15 ヒューマノイドロボット

最近よく聞く言葉だけど、「それどんな意味?」と聞かれたら自信を持っては答えにくい――。そんな言葉はありませんか? 連載コラム「いまさら聞けないキーワード」では、そんなロボット業界のキーワード・新ワードを紹介します。今回は、最近特に耳にするようになったヒューマノイド(ヒト型)ロボットについて解説します。

 最近、ニュースや展示会などで「ヒューマノイドロボット」という言葉を耳にする機会が増えました。英語の「Humanoid(ヒューマノイド)」は「人間に似た」という意味で、頭や腕、脚など、人の体に似た構造を持つロボットを指します。

 一般的な産業用ロボットが特定の作業を効率的に繰り返すために用いられるのに対し、ヒューマノイドロボットは、歩いたり人と対話するなど、ヒト型ならではの機能を生かした作業に用いられます。 
 ヒューマノイドロボットが注目される背景には、人手不足と作業環境の多様化があります。工場や物流倉庫などの現場は、例えば「人1人分の幅の通路」や「腰高の作業机」のように、もともと人が作業することを前提に設計されています。そのため、人と同じ体の作りやサイズ感を持つロボットの方が適応しやすいのです。ロボットに合わせて設備のレイアウトを変更する必要がなく、人とロボットが作業を柔軟に分担、代替できる点も、導入のメリットとして期待されています。

米国ボストンダイナミクスのヒューマノイドロボット「アトラス」による作業デモ(Boston Dynamics公式youtubeチャンネルの動画埋め込みリンク)

 ヒューマノイドロボットの実用化は従来のロボットよりも技術的なハードルが高く、長らく人と同等の機能を持たせるのは困難でした。しかし、近年では人工知能(AI)をはじめ急速に技術が進歩しています。軽量素材や高出力のモーター、小型化されたセンサー、AI制御の高度化などで、二足歩行が安定し、手先の動作精度が向上し、人と同じように10kg程度のものを運べるようになりました。デモンストレーション動画では、宙返りやバック転を軽々とこなすなど、平均的な人を上回る運動能力を披露するモデルも登場しています。

 一方、課題も多く残されています。関節構造が複雑で製造コストが高く、メンテナンスも難しい。バッテリーの持続時間も限られており、長時間稼働や負荷の高い作業には向きません。人と同じ空間で運用する場合の、安全確保の仕組みや社会的ルールの構築も始まったばかりです。

機械商社の山善が物流拠点でヒューマノイドロボットの試験を開始した(画像リンク:山善の試験導入の記事)

 ヒューマノイドロボットは多くのモデルが実証段階にあり、さまざまな現場で試験的に活用が進められています。倉庫では荷物のピッキングや棚入れ作業、建設現場では危険区域の巡回や資材運搬など。介護や受付などサービス分野でも導入が模索されています。開発を手掛ける企業は米国や中国に集中していますが、日本でも開発に向けた研究や投資が活発化しています。

 ヒューマノイドロボットの実用化が近付いているものの、実際に現場で広く使われるためには、「なぜヒト型なのか」との意義を明確にすることが重要です。狭い場所でも柔軟に移動したり、既存の道具や設備をそのまま使える利点をどう生かすかが鍵になるでしょう。

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