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2025.08.25
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[ロボットが活躍する現場vol.49]生きているうちに小ロット品の自動化を/曙工業

曙工業(愛知県安城市、杉山明隆社長)は産業用ロボットと小型切削加工機、数値制御(NC)旋盤を組み合わせ、自動車部品の量産加工を自動化するラインを構築した。同社は現在、さらなる生産性向上を目的に小ロット品の自動化も構想するが、自動化のハードルは高いという。杉山社長は「私が生きているうちに、小ロット品の自動化をどうにか達成したい」と力を込める。

守備範囲の広さ

曙工業の本社外観(提供)

 曙工業は自動車のブレーキなどの足回り部品や工作機械部品などを製造する。試作から小ロット生産、量産まで幅広く対応する。工場には複雑な形状を加工できる5軸マシニングセンタやNC旋盤、平面研削盤などの多彩な加工機をそろえ、鉄やステンレス、樹脂などさまざまな材質の加工対象物(ワーク)を加工できる。杉山社長は「わが社の強みは小型部品から大型部品まで、そして10個単位の小ロット品から数万個規模の量産品まで幅広く対応できる『守備範囲の広さ』にある」と胸を張る。

 同社は2023年、老朽化した自動車部品の量産ライン4本を一新した。従来は複数の加工方法を1台に集約した複合加工機に、ワークの自動搬送装置としてガントリーローダーとパレットチェンジャーを組み合わせた量産ラインを使用していた。これを、簡単にセットアップ可能なファナックの産業用ロボットシステムと、同じくファナックの小型切削加工機「ロボドリル」やTAKISAWA(岡山市北区、原田一八社長)のNC旋盤を組み合わせた2本の自動化ラインに入れ替えた。この導入には専用機や自動化ラインを設計製作する叶エンジニアリング(愛知県安城市、水谷克彦社長)が協力した。

 杉山社長は「ワークの着脱には高い精度が求められるが、ガントリーローダーの直線的な動作では細かな位置ずれへの対応が難しく、結果として手作業での補正を余儀なくされていた。そのため、精度を確保するには、カメラを使えば位置ずれを自動で補正できるロボットの方が適正だと判断した」と当時を振り返る。

省人化と省スペース化を

産業用ロボットと小型切削加工機、NC旋盤を組み合わせた自動化ライン

 新設された2本の自動化ラインでは、手のひらサイズの単一の自動車部品を量産しており、月間で4万個を製造する。作業者がコンベヤーにワークを並べると、カメラで認識したワークをロボットが把持し、NC旋盤に供給する。その後、一次加工されたワークをロボットがNC旋盤から取り出し、ワーク反転装置に置く。反転後にロボットがワークを小型切削加工機に設置し、二次加工を実施する。最後に加工が完了したワークをロボットがコンベヤーに排出する流れだ。

 杉山社長は「剛性(変形のしにくさ)の高い機械に一新したのに加え、複合加工機から単体機に切り替えたことで複数工程の同時処理が可能になった。その結果、生産量は維持したまま従来比でタクトタイムを約3割短縮できた。さらに、設置スペースが約半分となり、ラインあたりの作業者も2人から1人へ削減できた。省スペース化と省人化を同時に達成できたのは大きな成果」と語る。

ジレンマを抱える

「小ロット品の自動化はハードルが高い」と語る杉山明隆社長

 曙工業は現在、さらなる生産性向上を目的に小ロット品の自動化も構想する。しかし、取り扱うワークのサイズや材質が多岐にわたるため、自動化のハードルは高いという。 

 杉山社長は「部品が変わるたびに段取り替えが必要な上、ある程度の量をまとめて処理しないと自動化の恩恵は享受できない。しかし、それではわが社の強みである『守備範囲の広さ』を発揮できず、他社との差別化ができなくなる」とジレンマを語る。その上で、「今後はロボットメーカーやシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)との連携強化や、他社の自動化工場の見学などを通じ、これらの課題を解決する糸口を見つけたい。私が生きているうちに、小ロット品の自動化をどうにか達成したい」と力を込める。

                    (ロボットダイジェスト編集部 山中寛貴)

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