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2022.01.24

啓発からより実践的な支援へ/さがみはらロボット導入支援センター

相模原市などが出資するさがみはら産業創造センター(略称=SIC、相模原市緑区、橋元雅敏社長)は、1999年の設立時から起業家・ベンチャー企業の支援や地域の産業振興に取り組んできた。近年は特に、相模原市の産業政策の一環として、産業用ロボットの導入による地元企業の競争力強化や、地域のロボット産業育成の支援に力を入れる。近年、企業のニーズが変化し、導入支援の中身が変わってきたという。SICが運営する「さがみはらロボット導入支援センター」の川下敬之所長に話を聞いた。

ロボットのまち、相模原

SICには、JR横浜線・相模線、京王電鉄相模原線の橋本駅から徒歩で訪問可能

 相模原市は、産業用ロボットの導入支援やロボット産業の育成支援が手厚い自治体として知られる。相模原市や周辺の市町村は神奈川県の「さがみロボット産業特区」に指定され、相模原市でも独自に産業用ロボットの導入補助制度などを設けている。

 市内には三菱重工業の相模原製作所があり、2011年に宮城県に移転するまではトヨタグループのセントラル自動車(吸収合併により現在はトヨタ自動車東日本)の本社工場もあった。周囲には機械や金属加工、電子部品関連の企業が多く、工業が盛んな地域だ。
 しかし、国内の他地域と同様に相模原市も製造業が徐々に縮小傾向にあったことから、その流れを変えて地域産業の活性化を図るため、ロボットの普及拡大と関連事業者の育成に力を入れ始めた。
 産業用ロボットの導入が増えれば地元企業の生産性が向上して競争力が高まるだけでなく、地元に多い機械設計や電気設計、設備の据え付けなどができる企業にとってはロボットのシステム構築(システムインテグレーション=SI)が新規事業となる。

市外・県外の人も歓迎

複数のデモシステムが並ぶさがみはらロボット導入支援センター

 ロボットの導入支援の肝になるのが、SICが運営するさがみはらロボット導入支援センターだ。SICはベンチャー企業やロボット関連企業などが多数入居する施設SIC-1~SIC-3を運営しており、ロボット導入支援センターは「SIC-2 R&Dラボ」の1階に位置する。
 開設は2015年で、これまでに6000人以上が利用した。ロボット導入の相談やコンサルティング、人材育成の講座・セミナー、モデルシステムの展示などをする施設だ。

 相談やコンサルティングは、川下所長を含め、自動車メーカーや精密機械メーカーなどで豊富な経験を持つ計4人のコーディネーター陣が担当する。相談は無料で、希望する場合は有償にはなるが顧問としてのコンサルティングや社員研修、補助具(ジグ)の設計・試作など、継続的な支援も受けられる。これまで、金属部品の溶接工程や製品の包装工程など、幅広い自動化の支援実績があるという。

垂直多関節型、スカラ型、パラレルリンク型、直交型の各タイプを展示

 地元のシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の仕事につながる可能性もあるため、市外や県外企業からの相談も受け付けている。「山梨など遠方から相談に来る方もいる。また最近は導入検討企業やSIerに加え、周辺機器メーカーからの相談を受けることもある」と川下所長は言う。

 最近は、導入検討企業からの相談内容や、求められる講座の内容が変わってきたという。以前は「漠然とロボットに興味はあるが、何から手を付けてよいか分からない」といった相談が多く、セミナーでもロボット導入の意義を啓発する内容が好評だった。しかし現在は、導入相談では自動化したい工程が念頭にあるなどより具体的になり、求められるセミナーも実践的な知識やノウハウを伝えるものに変わってきた。

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