[気鋭のロボット研究者vol.11]普及期の今こそ、ロボットの教示を簡単に【後編】/横浜国立大学 前田雄介准教授
近年、ロボットの性能向上や適用範囲の拡大により、ロボットへの教示(ティーチング)作業を簡単にする技術へと注目が集まる。前田雄介准教授は、ロボットの制御ソフトウエアを軸に、教示を容易にする技術を研究する。直近では、無人搬送車(AGV)や「お掃除ロボット」といった移動式ロボット向けの技術を、固定した産業用ロボットに応用する。
移動ロボの技術で固定型も自律へ
前田雄介准教授は、産業用ロボットが稼働する周辺の環境を、ロボット自身が認識できるようにする研究に取り組む。 ここ2年ほどは、自動運転や自律移動型ロボットなどに使われるSLAM(スラム)技術を、固定して使う産業用ロボットに応用できないか、と模索している。 SLAMは「Simultaneous Localization and Mapping」の頭文字で、意訳すると「環境地図の作成と自己位置の推定を同時にする」こと。カメラや対物センサーなどを駆使して周囲の環境をデータとして取得。地図を作成しながら、ロボット自身の位置を推定する。それらの情報を基に、事前に指定された位置まで自律的に移動するのがスラム技術だ。 近年では、オフィスや商業施設向けの大型ロボット掃除機やAGVなどに取り入れられている。
身近なもので課題解決を
現在の課題は、取得情報の精度向上だ。現状は所得した情報を専用ソフトで整えることで「なんとか使える」レベル。そこで、測定範囲内に目印として白黒のチェッカーボードを張るなど、工夫を重ねる。チェッカーボードがあるとそこが一つの目印になり、認識精度は大きく向上した。 前田准教授は「コストをかけず、身近なもので効果を出せた好例。試せるものは試してみたい」と、さらなる精度向上に取り組む。
――終わり (ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)
前田雄介(まえだ・ゆうすけ) 横浜国立大学 大学院工学研究院 システムの創生部門 准教授 1995年3月東京大学工学部卒。99年4月東京大学大学院工学系研究科精密機械工学専攻助手。2004年4月横浜国立大学大学院工学研究院システムの創生部門講師。07年4月より現職。ロボットが高機能になればなるほど、人が補うべき余地も増えると、ロボットに親心を持ちながら接する。愛知県出身の47歳。 関連記事:[気鋭のロボット研究者vol.11]普及期の今こそ、ロボットの教示を簡単に【前編】/横浜国立大学 前田雄介准教授