[SIerを訪ねてvol.55]中子のバリ取りや搬送に特化/松下工業
パッケージ仕様のシステムも販売
松下工業の技術力の源は、全て自社の中子の製造現場にある。 同社は1993年に安川電機のロボットを導入したのを皮切りに、30年以上にわたって中子のバリ取りや搬送の自動化を推し進め、ティーチングや刃物選定などのノウハウを磨いてきた。 従来は社内向けの自動化がメインだったが、2012年に大きな転機が訪れた。取引先の自動車メーカーからの依頼を受けて中子製造の専用設備とロボットシステムを納入したのをきっかけに、同社は中子専業SIerとしての第一歩を踏み出したのだ。松下専務は「数年後にはその自動車メーカーの海外工場にも同様のロボットシステムを水平展開した。こうした経験を踏まえ、これまで社内で使っていた中子のバリ取り用ロボットシステムが外販できるかもしれないとの手応えをつかんだ」と語る。
その後、中子のバリ取りの自動化に悩む同業他社などを対象に、16年ごろからロボットシステムの外販に本腰を入れ始めた。同社の社内の自動化事例や自動車メーカー向けに手掛けたロボットシステムの実績が口づてで業界内に広がり、同業他社からの引き合いの増加につながったという。22年には専門部署としてロボット事業部を立ち上げた他、本社工場の近隣に専用の生産拠点も構えた。 近年はオリジナル商品の開発や拡販にも力を入れており、22年5月には中子搬送などに適した耐熱性の高いゴム製グリッパー「MKグリップ」を発売。また、壁掛けタイプのロボットや刃物など、バリ取りに必要な要素をひとまとめにしたパッケージ仕様のロボットシステムも今年4月に発売する計画だ。「ロボットシステムの仕様を決めるための打ち合わせの頻度が減るため、コストや時間を大幅に削減できる。今後はパッケージ仕様のバリ取り用ロボットシステムのPRを強化し、SIer事業のさらなる拡大につなげたい」と松下専務は意気込む。
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)