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2019.09.30

連載

[注目製品PickUp!vol.18]性能と操作性が高い卓上ロボット【後編】/蛇の目ミシン工業「JR3000シリーズ」

小型で精密、ロボならではの強み

カメラを搭載した塗布仕様の「JR3000AP-D」

 JR3000シリーズは大手の電機メーカーをメインのターゲットにしている。セールスポイントは、小型で精密。「もともとは人手よりも精密で正確な動きの実現を目指して開発したが、現在では労働力不足への対応で導入されることが激増している」(保坂本部長)。さらには、労働力不足への対応だけでなく、ロボットゆえの利点から導入する事例も数多い。

 例えばねじ締めであれば、人が作業をすれば「忘れる」こともあるが、ロボットならば忘れることはない。また塗布の作業では、細かすぎて人間ではできない作業もあり、そこで繰り返し精度が数μmの卓上ロボの需要も生まれる。

 卓上ロボの用途は他にも、人による目視に代わる検査工程、同じく人間の感覚で判定する官能検査に代わるテスターなどがあり、表面処理でプラズマ加工をする装置に組み込まれたり、医療関連で人手代わりに採用されたりもする。

エンジニアリング含めた提案も

卓上やスカラ、直交のロボットと、サーボプレスを組み合わせた全自動組み立てライン

 蛇の目ミシン工業が製造するロボットは卓上ロボだけではない。3・4軸直交ロボット「JC-3シリーズ」や水平多関節(スカラ)ロボット「JS3シリーズ」もラインアップする。
 「直交やスカラについては後発のため、現在のところ卓上ロボを望む顧客に補完的に提供する程度」(保坂本部長)という。これにより、操作や保全の観点からロボットのメーカーをそろえたいとの要望に対応する。

 また、今年7月に開かれた塑性加工(材料に大きな力を加えて変形させる加工法)の専門展示会「MF-TOKYO2019」で初めて披露したのが、卓上やスカラ、直交のロボットと、サーボプレス(エレクトロプレス)を組み合わせた全自動組み立てライン。労働力不足への対応として、人が介在しなくてもよい組み立て製造ラインを提案した。

 エレクトロプレスは1984年に外販を開始。そもそもミシン用のモーターを内製するために、「世の中になかったから精密カシメ用のエレクトロプレスを開発した」(保坂本部長)。トレーサビリティー(追跡可能性)を確保するためにデータを残せる仕様とした点に大手自動車メーカーが目を付け、大量導入につながった製品だ。

顧客でも立ち上げやすい

下方集じん方式の基板分割ロボット「JR3000EBV」(蛇の目ミシン工業提供)

 卓上ロボットのラインアップは広く、50~60種類をそろえる。また、卓上ロボにはIPアドレス(インターネットに接続された機器に与えられる識別番号)を持たせることができるため、データをネットワーク化することもでき、モノのインターネット(IoT)にも対応する。

 今後の課題としては機能向上を挙げる。現在の卓上ロボは3軸あるいは4軸駆動だが、6軸駆動を可能にすべく研究開発しているという。

 卓上ロボの顧客からは他社製品と組み合わせた装置の依頼などもあり、SIer的な業務が拡大傾向にあるため、エンジニアリング部門の稼働率が上がっているという。
 一方、「わが社のロボは使いやすさが特徴のため、単体で導入する場合にはユーザー企業自身がシステム構築を担うことも少なくない。高度なエンジニアリングが必要な複雑な製造ラインと、ユーザー自身が構築できるシンプルな生産設備、そのどちらにも使えるため、需要の裾野は広い」(保坂本部長)と自信を見せる。

――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 芳賀崇)

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