[コラム]最新AIを超える知能
新方式の現実味
最新のAIよりももっと汎用性が高く、臨機応変に対応できる知能をロボットに実装するにはどうすればいいか。答えは簡単だ。脳の役割だけ人が担えばいい。 産業用ロボットは「ティーチングプレーバック」で動かす。人がロボットに動作を教え込み、ロボットがその動作を繰り返す方式だ。しかしそれだけでなく、人がリアルタイムで操縦するロボットがあってもいいだろう。 次世代通信規格(5G)の環境なら、タイムラグなく機敏に動かせる。光を反射したり透過する物体をAIで認識するには高い技術が要る。しかし人には造作もないことで、超多品種への対応も簡単だ。事前にデータを学習する期間も要らない。操縦式ロボットは宇宙船の船外アームや手術用ロボットなど、産ロボ以外では実績がある。
画像処理システムは高価だが、高いのは解析するソフトウエアで、カメラだけなら安い。では労務費はどうだろう。内職の平均時給は200円~600円と言われる。同じように自宅で出来るなら、時給1000円でも応募者は集まりそうだ。一人で複数台を操作する多台持ちなら、労務費はさらに下がる。 最新AIを超える知能をそれほど安価に確保できるなら、特殊な用途では操縦式も選択肢の一つになり得る。自宅で画面を通してゲーム感覚で働けるなら、若者も集めやすい。事務所勤務のパートスタッフが遠隔地の現場仕事に従事することもできる。 少し前までなら、こうした話は完全にただの絵空事だった。しかし新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークを経験した人は多く、完全な終息には時間がかかる。新型コロナ対策の観点から作業者の密集を防ぐため、ロボットが大きな注目を集めており、いまだ自動化が実現できていない領域でもロボット活用が求められている。操縦式の産業用ロボットが、少しだけ現実味を帯びてきた。
(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)