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2024.06.10
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[ロボットが活躍する現場 vol.36]樹脂成形の現場が一変! 5年で生産性2倍に【前編】/石川樹脂工業

1台の射出成形機に一人の作業者

生産現場での作業の様子

 それまで導入していたのは、射出成形後にワークを取り出す直交型の取り出しロボット程度。1台の射出成形機に一人の作業者がほぼ付きっきりになるような生産現場だった。  外国人の技能実習生も多かったが、それでも人手が足りなかった。さらに、技能実習生は3年で帰国するため、引き継いだ技能が生産現場に定着しない課題も抱えていた。  工場全体の射出成形機の稼働率は良くて5割弱、平均すると35%と低い水準だった。

「一気に5台は驚いた」

最初に導入した協働ロボット。今も生産現場で活躍する

 石川会長は「そんな状況で、息子の石川勤専務から『ロボットを導入したい』と相談があった」と振り返る。  そこで、2019年6月にファナックの協働ロボットを導入し、射出成形機と組み合わせて使い始めた。  この時、実は石川会長には、あまり効果的に機能しているように見えなかったそう。  しかし、生産現場の反応は違った。  開発部の北村匡浩マネージャーは「ロボットが実際に機能すれば、一度の成形サイクルにかかる時間を短縮でき、省人化もできる。私が中心となり、導入する前にロボットの安全教育などを受けたこともあり、将来像が見えた」と振り返る。

石川章会長は今年、国から春の勲章の一つ「旭日単光章」を授与された。お祝いの花が多数届いた

 そこで19年末に、協働ロボットではなく、動作スピードの速い一般的な産業用ロボットを5台購入する申請を、石川専務と北村マネージャーが石川会長に出した。  1台目の時に抱いたイメージもあり、石川会長は驚いたという。当時から世の中の自動化需要が高く、ロボットシステムを組むシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)は1年先まで予定が取れない状態だった。そのため、地元の金融機関からも「SIerを介さない導入は無謀」と反対された。  ただ、金型の製作部隊を中心に設計用の3DCAD(設計支援)ソフトウエアに手慣れていた。応用すれば、ロボットシステムの構造設計にも使えるなど、社内にロボットを扱えそうな人材や素養があった。「そうした背景もあり、リスクもはらむが、思い切って決断した」(石川会長)。  金融機関を説得して融資を受け、5台のロボットを導入した。合わせて、ロボットシステムを内製する体制を整えた。  それから、一気にロボットの導入が進んだ。  現在の具体的な活用方法は、後編に掲載する。  後編はこちらから(6月11日公開予定)

(ロボットダイジェスト編集部 西塚将喜)

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