[SIerを訪ねてvol.65]「守破離」の精神で磨くエンジニアリング力/ニシカワ
ニシカワ(三重県亀山市、西川裕社長)は機械や機器の制御に欠かせないプログラマブル・ロジック・コントローラー(PLC)のプログラミングや電気制御設計を得意とするシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)。同社は芸道の修行の過程を示す「守破離」の精神を社員教育に取り入れる。西川社長は「未経験で入社した若いエンジニアでも守破離の精神を持って日々修練を積めば、PLCやロボットなどを組み合わせて顧客の要望に沿った自動化システムを構築できる。エンジニアリング力が自然と磨ける環境がわが社には整っている」と語る。
多彩なPLCとロボットを扱える
2016年に創業したニシカワは、 PLCのプログラミングや電気制御設計、PLCを組み込んだ制御盤の設計、製造を得意とする。また、安全柵なしで使える協働ロボットや、安全柵が必要な一般的な垂直多関節ロボットを用いた部品の組み付けや検査の自動化システムも構築可能で、設備メーカーから依頼を受け、ロボットのティーチング(動作を覚えさせること)や電気配線、調整、据え付けを請け負う。ファナックや安川電機、台湾のテックマンロボットなど国内外のメーカーのロボットに加え、三菱電機やオムロン、キーエンスなどのPLCを扱えるのが強みだ。
西川社長は「わが社は多彩なロボットとPLCを扱えるため、自動車や食品、石油関連などの幅広い業界の自動化を支援できる。メーカーごとに操作性や通信規格が異なるPLCを扱うには豊富な知識が必要だが、前職の装置メーカーで培ったPLCプログラミングの経験を生かし、私自身が前面に立って自動化システムの構築に取り組んでいる」と語る。
多能工化を目指す
ニシカワの従業員数は22人。そのうち20代から30代を中心とする17人がエンジニアで、そのほとんどがエンジニア未経験者だ。「採用はエンジニア経験の有無を問わず、本人の『やる気』を重視する」と語る西川社長は、エンジニアの多能工化に向けた教育に力を入れる。
西川社長は「人には得意不得意があるので、まずは一つでいいから得意分野を作れるよう社員を指導する。多能工化によって人員の稼働率が向上すれば生産コスト削減にもつながる」と語る。
同社ではこうした考えの下、全員が1つの専門分野だけに特化するのではなく、PLCのプログラミングやティーチングなど複数の業務に対応できるよう、社内にはファナックのロボットに加え、三菱電機とオムロンのPLC を設置。ロボットの操作やPLCのプログラミングを常時学べる環境を整えた。また、西川社長自らも現場に立ち、一人一人の成長度合いを見極めながら直接社員を指導している。
さらに、高校時代まで剣道に打ち込んできた西川社長は、芸道の修行の過程を示す「守破離」の精神を社員教育にも取り入れた。仕事の習熟度を、基礎知識と技術を身に付ける「守」、多能工として応用力と実践力を磨く「破」、そして個性を発揮し多様な業務に挑戦する「離」の3段階に分ける。西川社長が定期的に行う社員との個人面談では、この守破離を共通の指標として活用し、社員一人一人の現在の習熟段階を確認している。
西川社長は「未経験で入社した若いエンジニアでも守破離の精神を持って日々修練を積めば、PLCやロボットなどを組み合わせて顧客の要望に沿った自動化システムが構築できる。こうしたエンジニアリング力が自然と磨ける環境がわが社には整っている」と語る。
提案型のシステム構築を
こうして培っているエンジニアリング力を基に、ニシカワが最近開発に力を入れるのが、中国のMech-Mind(メックマインド)の3Dビジョンセンサーを活用したばら積みピッキングシステムだ。3Dビジョンセンサーで被加工物(ワーク)の位置や姿勢、大きさ、状態を把握し、その情報を基にピッキングしやすいワークを選別してロボットが把持する仕組みだ。
西川社長は「ピッキングするワークの位置を自動で認識できる上に、コードがなくてもロボットの動作プログラムを簡単に生成できる。メックマインドの3Dビジョンセンサーを採用した理由はそこにある」と語る。
金属部品加工をはじめとする製造業では、これまで技術的に実用があまり進んでこなかったばら積みピッキングの自動化への期待感が高まっており、同社には既に自動車関連企業から複数の引き合いも寄せられているという。西川社長は「わが社はこれまで設備メーカーから依頼を受け、ティーチングや電気配線といった一部工程のみを請け負うケースがほとんどだった。しかし、企業として成長するには受託型のシステム構築だけでなく、提案型のシステム構築にも挑戦する必要があると考え、ここ数年でばら積みピッキングシステムの試作開発を重ねてきた」と説明する。加えて、「この挑戦は、まさに守破離の精神でいう『離』に相当する。成功すればわが社のエンジニアにとって大きな自信につながる」と力を込める。
インドネシアに現地法人を設立
ニシカワは今後10年以内に、現状で年間3億円の売り上げを10億円に増やす目標を掲げる。その実現にはエンジニアリング力の強化と自社の人手不足の解消が欠かせないとし、即戦力として期待できる人材の採用を進めてエンジニアを50人ほどに拡大する方針だ。採用強化の一環で、22年にはインドネシアのジャカルタ近郊の西ジャワ州ブカシ県に現地法人を設立し、現地採用したインドネシア人のエンジニア3人を即戦力として日本に招いた。これまで人手不足を理由に断っていた案件も今後は積極的に受注し、売り上げ拡大につなげる狙いだ。
西川社長は「前職でインドネシアに駐在した経験から、同国のエンジニアの技術力の高さを知っていた。現地でも製造業の自動化需要は高く、現地での受注案件はインドネシア人のエンジニアに任せつつ、今後も現地採用を拡大して未来の即戦力を発掘したい」と話し、「慣習や言語の違いはあるが、日本と同様に守破離の精神を徐々に浸透させれば、海外の現地法人でも全員が同じ方向で仕事ができる」と強調する。

