• コラム
2025.07.01
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[エディターズノートvol.16]ヘイ、ロボット! これやって

 ドイツ・ミュンヘンで6月24日~27日に開かれた「automatica(オートマティカ)2025」を取材した。

 各社の具体的な展示リポートは後日公開予定だが、会場では「技術者ではない普通の人でも、ロボットが簡単に使える時代に入りつつある」と強く感じた。

 アームを手で持って動かすダイレクトティーチングや、文字でコードを書かなくてよいブロック型プログラムなど、これまでもさまざまな技術が開発され、ロボットの操作は簡単になってきた。今回のオートマティカではさらに、ドイツ大手のKUKA(クカ)が生成人工知能(AI)技術を応用したロボットの教示方法を大々的に発表した。

オートマティカの会場でのKUKAの展示。右のパソコンで自然言語から動作プログラムを生成し、左のロボットを動かす

 同社のシミュレーションソフトウエア上で「パレタイズで、幅400mm×奥行き350mm×高さ300mmの箱を5段積み付けて」などと文章で指示すると、30秒ほどで数十行分のその動作プログラムが自動で生成される。その動作に問題がなければそのまま実機に転送することも可能だ。

 「パレットはコンベヤーの右に配置して、高さ2500mmの柵を付けて」など、レイアウトの作成も自然言語でできる。デモは英語だったが、日本語を含むさまざまな言語で使えるという。

 

 私は、画像の作成では生成AIを使うことがある。それと同じような感覚で、日本語の文章でロボットの動作プログラムを作成できるなら、心理的ハードルはかなり下がる。

 今、ロボットの普及を阻んでいる一番の要因が、ユーザーの「心理的ハードル」ではないだろうか。人件費の高騰でロボットの投資回収はしやすくなり、各社の技術開発でより簡単にロボットに動作を教示できる方法も増えてきた。あとは心理的ハードルさえ突破できれば、これまでロボットを使ってこなかった産業でもロボットが当たり前に使われるようになり、人手不足との大きな社会課題を解消できる。

 

 「実際に簡単か」ももちろん大切だが、何よりも重要なのは「いかに簡単に見えるか」で、生成AIでのプログラム作成はこの上なく簡単に見える。ユーザーの心理的ハードルを下げられるこの技術は、今後大きなトレンドとなりそうだ。

(ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)

※「エディターズノート」は毎月最初の営業日に掲載しています。

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