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2021.12.08

協働ロボットの導入支援サービスを拡充/iCOM技研

協働ロボットシステムの開発や運用のための教育をするシステムインテグレーター(SIer、エスアイアー)のiCOM技研(兵庫県小野市、山口知彦社長)は、協働ロボットの導入を支援するサービスを拡充した。10月には協働ロボットの要素を組み込んだ特別教育のプログラムをスタートし、今後もロボットを使いこなすためのトレーニングなどの教育コンテンツを順次発信していく予定だ。2022年度以降に定額のサブスクリプション方式で協働ロボットシステムを提供する準備も進めており、協働ロボットならではの使い方や考え方の浸透に努める。

産業用ロボットとは違うもの

「協働ロボットはもっと広く活躍できる」と語る山口知彦社長

 「協働ロボットは、非協働型の産業用ロボットとは比較できません」――。iCOM技研の山口社長はこう力を込める。人と隣合わせで使える協働ロボットと周囲に柵が必要なロボットを、同じ土俵で比較できないことは自然なことだ。しかし現実には、イニシャルコストや動作速度など厳しい比較にさらされることが少なくない。

 山口社長は「一般的な産業用ロボットは設備だが、協働ロボットは新入社員のようなもの。使いこなすにはユーザーの考え方を変える必要がある」と話す。協働ロボットは生産性向上のためのツールであり、自由に組み替えながら柔軟に運用できるのが特徴という。ユーザー自ら使い方を改善していく過程で協働ロボットを身近に感じ、活用してもらうのが理想像だ。「まずは協働ロボットに対する壁を取り除き、多くの現場で使ってもらえるよう支援したい」と語る。

 同社はデンマークのユニバーサルロボット(UR)の協働ロボットを専門に取り扱い、協働ロボットシステムの開発や教育などを手掛ける。FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会、会長・久保田和雄三明機工社長)に所属するSIerだが、単にシステムを開発、製造するだけでなく、ユーザー自身が協働ロボットを使いこなす支援に力を入れている。

協働ロボットのユーザーを育てる

 協働ロボットの導入を支援するため、今秋相次いで支援事業を拡充した。今年9月には、ユーザーの事情に合わせたウェブセミナーを始めた。「ロボットユーザーはロボット技術者になる必要はない。自動車の運転免許と整備資格が別であるように、使うために必要な知識を取捨選択して学ぶ必要がある。ロボットシステムは現場ごとに少しずつ違うので、セミナーの内容はユーザーに合わせるべき」と山口社長は話す。

 10月には協働ロボットを用いた特別教育をスタート。特別教育はロボットを扱う担当者は必ず受講しなければならない安全に関する講座で、自社で実施する他、新産業創造研究機構(NIRO)を通じて兵庫県内のロボットメーカーやSIerと協力し、より大きな規模でも実施する。同社の技術力を証明するため、SIerとしては初めてとなるURのトレーナー資格を今年8月に取得した。

  • ウェブセミナーの様子

  • セミナー中にテストをして受講者の理解度を測ることも

サブスクで協働ロボットを

導入しやすいパッケージ製品として開発した「iパレタイザーX」

 同社はこれまでにも協働ロボットの導入支援に取り組んできた。ユーザー向けに2018年からリモートメンテナンスを提供する他、URの協働ロボットを組み込んだパレタイズシステム「i Palletizer(パレタイザー) X」を開発しパッケージ製品として販売している。システムをパッケージ化することで導入に必要な知識や人材などのハードルを下げつつ、ウェブセミナーや特別教育で補完し、協働ロボットの導入支援を図る。

 22年以降には、必要な時に必要な台数を設置、運用できるサブスクリプション方式で協働ロボットシステムの提供を開始する予定だ。教育サービスなどを契約する顧客に限定して提供する見込み。

 また、兵庫県立大学大学院情報科学研究科の笹嶋宗彦准教授と共同で、協働ロボットのユーザー向けのマニュアルを作成する準備を進めている。「専門用語を分解して極力分かりやすくし、ユーザーが協働ロボットを使いこなすためのツールにしたい。商品化はまだ当分先だが、協働ロボットを導入しやすくする商材として期待している」と山口社長は話す。

(ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)

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