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2021.01.26

連載

[注目製品PickUp!vol.33]重労働の研削作業を遠隔操縦ロボットで【後編】/川崎重工業「Successor-G」

人が担ってきたあらゆる作業のうち、今のロボット技術で自動化できるものはまだわずかだ。ロボットの導入台数も少ない。川崎重工業の研削向け遠隔操縦ロボットシステム「Successor-G(サクセサーG)」は、作業者の技能や感覚を要する領域にもロボットの適用を進めることで、新市場の開拓や総合ロボットメーカーへの脱皮を狙う戦略的な製品だ。次世代通信(5G)を活用した実証実験にも取り組んでおり、遠隔操縦システムがさらに進歩すれば、働き方改革や人手不足解消に貢献する可能性も秘めている。

ロボット普及はまだ序盤

 国際ロボット連盟(IFR)の統計によると、製造業に従事する1万人当たりのロボットの台数は、日本では364台だ。最も多いシンガポールや韓国でさえ1割に満たない。「ロボット市場は伸びているが、働いている人の数からするとまだまだ少ないのが実情」と長谷川省吾理事は話す。

 ロボット化が難しい作業領域はおよそ3つに大別できる。1つは技能や感覚を要する作業。組み立てや研磨に加え、搬送などの作業でも対象物のばらつきが大きい場合は自動化するのが困難だ。2つ目は、開発のコストや手間が見合わない作業。多くのセンサーやカメラを使えば自動化できる作業でも、投資と効果が見合わなければ導入できない。3つ目は、ティーチングとプレーバック(設定通りに反復すること)で定義できない作業。扱うものや作業の変化の幅が大きければ大きいほど、プログラムは複雑になる。
 長谷川理事は「サクセサーは、こうした自動化の問題を何とかしようと考えて開発した」と語る。ロボットで自動化できる領域を広げられれば、ロボット市場は拡大する。

ロボットの適用領域を広げるために

ティーチング&プレーバックだけがロボットではない

 作業者の技能や感覚を要する領域で完全な自動化は難しいが、人手で補助しながらロボットを使えば、作業者の負担を軽減できる。
 サクセサーには、「オン・ザ・ジョブ・ラーニング」という学習機能が実装されている。作業者によるコミュニケーターの操作を人工知能(AI)が学習し、繰り返すうちに効率の良い動きを導き出し、自動化に近付ける機能だ。イレギュラーな作業が発生し作業者の補助が必要な場合だけストップする。

 プログラムのない状態から学習していくので、プログラムを作成する必要がなく、さまざまな使い方を見込める。「サクセサーGを使いながら開発に取り組んだ播磨工場の現場では、プログラムが不要な点が好評。作業者が時々動きを補助するだけでいいので、使いやすい」と話す。

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