生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.08.03

[5日間の夏期集中講座vol.1]ここだけは押さえたい!産業用ロボットのきほんの「き」/ロボットの定義

産業用ロボットのウェブマガジン「ロボットダイジェスト(ロボダイ)」は創刊以来、ロボット関連のさまざまな記事を発信してきた。だが、過去の記事を振り返ると、一つだけ足りないものがあった。ロボットの基本的な内容を解説する、きほんの「き」の記事だ。基礎的な事項を紹介する常設ページ「基礎知識」はあったが、この欄で基礎知識を解説したことはなかった。高校や大学受験の世界では「夏はライバルに差を付けるチャンス」と言われる。そこで、ロボダイでも「夏期集中講座」と題し、押さえておくべき基本的なポイントを5日間にわたって解説する。初回はロボットの定義を取り上げる。そもそも「ロボット」って何だ――?

「ロボット」って何?

さまざまな現場で活躍するロボット

 読者の皆さんは、「ロボット」と聞いて何を思い浮かべるか?
 「ドラえもん」「鉄腕アトム」「機動戦士ガンダム」といった人気アニメに登場するロボットや、ソフトバンクが開発した人型ロボット「Pepper(ペッパー)」やソニーのペットロボット「aibo(アイボ)」、自動車の工場で火花を散らしながら稼働するアーム型の溶接ロボットなど、思い浮かべるものは人によって違うだろう。

 ロボットとは何か――? 実は、この質問に答えるのは非常に難しい。ロボットの一般的な定義が存在しないからだ。「ロボットとはこういうもの」という共通認識がないので、人によって思い浮かべるものも変わる。
 しかし、このままだとロボットのイメージが全くつかめないので、ここではまず、経済産業省と日本工業規格(JIS)による定義をそれぞれ紹介する。

 経済産業省は2006年にまとめた「ロボット政策研究会 報告書」でロボットを以下のように定義した。
 「センサー、知能・制御系、駆動系の3つの要素技術を有する、知能化した機械システム」

 また、JISでは「JIS B 0134」で、ロボットを次のように定めた。
 「二つ以上の軸についてプログラムによって動作し、ある程度の自律性をもち、環境内で動作して所期の作業を実行する運動機構」

産業用ロボットとサービスロボット

産業用ロボットとサービスロボットの分類

 経済産業省とJISの定義を紹介したが、これらを満たす機械であれば全てロボットと呼べる。ドラえもんもペッパーも溶接ロボットも、大きなくくりでは同じ「ロボット」だ。

 そのため、ロボットは非常に裾野が広い機械にはなるが、実際には大きく2つの種類に分けられる。

 ①産業用ロボット
 ②サービスロボット

 ロボダイは産業用ロボットに特化したウェブマガジンなので、以降は産業用ロボットに関する基本的な知識をメインに紹介していくが、そもそも産業用ロボットとは何だろうか?
 
先ほど紹介したJISでは、産業用ロボットを次のように定義している。
 「自動制御され、再プログラム可能で、多目的なマニピュレーターであり、3軸以上でプログラム可能で、1か所に固定して又は移動機能をもって、産業自動化の用途に用いられるロボット」

 つまり、ある作業を自動化するために産業用途で使われるのが産業用ロボットだと言える。これまで人手に頼っていた作業や、人手ではやるのが難しい作業を人の代わりにこなすのが主な役目だ。
 JISの定義内のマニピュレーターとは、人の手や腕の代わりに作業する機構のことで、産業用ロボットで言えばアーム本体に当たる。

 一方、日常生活の支援や人とのコミュニケーションなど、産業用途以外で使われるロボットを総称して「サービスロボット」と呼ぶ。

 冒頭の例で言えば「自動車の工場で火花を散らしながら稼働するアーム型の溶接ロボット」は産業用ロボットに当たり、「ソフトバンクのペッパーやソニーのアイボ」はサービスロボットに該当する。

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