[SIerを訪ねてvol.6]人材育成に力を入れる専業SIer【前編】/高丸工業
中小企業こそロボットを導入すべき
18年度に開発した自動化システムの内訳は、用途別・台数ベースでハンドリングが55%でアーク溶接が20%。その他、スポット溶接や切断などがある。ロボットの総数は62台を数える。 高丸社長は「搬送系システムは工場やライン単位で受注することが増えており、売り上げに占める割合は高くなる傾向にある」と話す。そのような大型案件は、決算時期前後の納入タイミング次第で、数千万円から数億円という規模で年間の売上高を左右してしまう。 18年度に開発した案件のうち、73.6%が中小企業からの受注だ。「07年ごろから中小企業への提案に力をいれている」と高丸社長。「中小企業でも5000万円ぐらいまでなら積極的に投資をする傾向がある。工作機械の価格と比べても、手が出ないほどではない」と語る。 中小企業への提案に力を入れるようになったのは、「重工、重電などのクライアントは大量生産はしていない。多品種少量生産という意味では中小企業のものづくりと共通しているところがあり、ノウハウを生かせる」(高丸社長)と気付いたことがきっかけだった。中小企業こそ人手不足に悩んでおり、ロボット導入を勧められると高丸社長は話す。
多品種少量生産もロボットで
同社の顧客としては中小企業が増えているが、中小企業全体で見れば、ロボットが順調に普及しているとは言いにくい。 「中小企業には『多品種少量生産なのでロボット導入には向かない』と話す人が多いが、そんなことはない」と高丸社長は力を込める。 高丸社長は、30年ほど前に工作機械が手動操作から数値制御(NC)に置き換わったことで自動化が進んだことを例示する。「工作機械のNC化が急速に進んだのは、経営者の世代交代が背景にあった。『これからはNCの時代だから』と経営のバトンタッチを機に設備を買い替えたと考えている。当時『多品種少量生産にNCは向かない』と言われたが、今は1品でもNCで加工する時代」と高丸社長は自身の見解を話す。 そして、30年経った今、再び世代交代のタイミングを迎える企業が増えており、「ロボットの普及、つまりは『ロボット化』という中小企業にとってのイノベーションが起きつつある」と高丸社長。 到来しつつある中小企業への普及期に備えて、ロボットを扱える人材を育てることが急務だ。そこで同社では、専属のインストラクターや設備を持ち、ロボット導入や技術支援をする「ロボットテクニカルセンター」を設立。ロボットに関するユーザー企業の人材育成を支援し、多くの人材を輩出している。 後編ではそういった人材育成支援の取り組みなどを取り上げる。
――続く (ロボットダイジェスト編集部 松川裕希)