• インタビュー
2024.06.06
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差別化の鍵は素材にあり/コンバム 佐藤穣社長 インタビュー

素材に着目すればまだまだ進化する

「素材次第で新たな機能や性能を付与できる」と話す佐藤穣社長

――真空吸着式のロボットハンドは昔からある機器ですが、まだまだ進化の余地があるのですね。  基本構造などは既に確立されています。しかし、素材に着目すればまだまだ進化させる余地があります。例えば、ワークとの接点となる吸着パッド。これも形状が抜本的に変わることはありませんが、素材を変えれば新たな機能や性能を付与できます。

静電気対策を施したESDシリーズ(上)と食品や医薬品に対応するハイジェニックシリーズ

――素材で新たな機能?  例えば最近の新製品では、素材を刷新することでこれまでにない機能や性能を実現したものとして、静電気放電(ESD)対策を施した「ESDシリーズ」や、食品や医薬品に対応する「ハイジェニックシリーズ」があります。ESDシリーズは電子部品の損傷を防止する吸着パッドで、コーティングではなく素材そのものでその特性を付与するため、安定した性能を確保できます。ハイジェニックシリーズでは、より衛生的な製品を製造するため、工場内にクリーンルームを新設して原材料から一貫した生産体制を構築しました。

――素材の研究が重要なのですね。  吸着パッドにはゴム系の材料が使われることが一般的です。ゴム系の材料では、ゴムの素材にさまざまな添加剤を混ぜて練り合わせる混練作業がポイントで、この工程でさまざまな性質が決まります。普通の吸着パッドメーカーは、専門業者に委託して練った後のゴム材料を仕入れて成形するだけですが、コンバムではこれを内製化し、研究するラボまで開設しました。混練する機械や各種試験機をそろえ、専任の担当者を置いています。 ――外注することが多い工程をあえて社内で行うのですね。  専門業者でも添加剤を調整してニーズに合わせたゴム材料を提供してくれますが、他の仕事との兼ね合いなどもあり、材料開発にはかなりの時間が掛かります。社内なら自社のニーズに合わせた素材を作り、検証して改善するといったサイクルを高速で回せ、ニーズに完全に合致した材料を製造できます。こうしたゴム関連の開発・製造機能の強化や、ハイジェニックシリーズを製造するクリーンルームを設置するため、2022年には主力の岩手工場に新工場棟も建設しました。

ニコニコ超会議に協賛

――コンバムと言えば、動画投稿サイト「ニコニコ動画」のユーザーが集まるイベント「ニコニコ超会議」にも協賛していますよね。  昨年に引き続き今年も、超会議の「超神社」という企画に協賛しました。今年はニコニコ動画で人気の釣りゲームとコラボレーションして、真空機器を使った「真空釣り」を会場で体験してもらいました。 ――「超神社」といえば、超会議が開催されている間は常時リアルタイム配信される人気企画ですね。  そうですね。私も「配信に出てほしい」と主催者から言われ、出演もしました。ニコニコ超会議は10万人以上が来場する大きなイベントですが、若年層の一般消費者向けのため、真空機器の売り上げには正直あまりつながらないと思っています。それでも、一般の方々にロボットや真空機器を少しでも知ってもらえれば幸いです。また、真空機器はB to B(企業向け)の製品で、社員が自分の友人や家族に会社のことを話しても分かってもらえないと思いますが、「ニコニコ超会議の『超神社』の会社」と言えば、少しは身近に感じてもらえるかもしれません。こうした取り組みも織り交ぜながら、コンバムを「社員が誇れる会社」にしたいと私は考えています。

(聞き手・ロボットダイジェスト編集デスク 曽根勇也)

佐藤 穣(さとう・ゆたか) 1984年妙徳(現コンバム)入社、2003年営業部長、05年開発部長、08年執行役員東日本営業担当、09年執行役員開発部長、13年取締役執行役員開発担当兼開発部長。コンバムコリア専務理事、コンバムタイランド代表取締役。1965年生まれ、岩手県出身の58歳。 関連記事:[注目製品PickUp! vol.19]同業者も驚く特殊構造で、いろんな物を吸着する【前編】/妙徳(現コンバム)「バルーンハンドSGBシリーズ」 関連記事:[2023国際ロボット展リポートvol.12] 多様なニーズに応える真空ハンド・吸着パッド/コンバムほか 関連記事:ESD対応の新素材を使った吸着パッドを発売/コンバム

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