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2022.01.11

連載

[ロボットが活躍する現場vol.16]中小で塗装ロボットを使いこなす驚きの着眼点/久保井塗装(1/3)

久保井塗装(埼玉県狭山市、窪井要社長)は、樹脂部品などを塗装する「工業塗装」の中小企業だ。スプレーガンから塗料を噴射する塗装を専門にする。塗装作業の自動化を目指し、2015年に産業用ロボットを導入した。一般的に、塗装の自動化では不良品の発生率を下げるため、恒温・恒湿の環境を整える。しかし、エネルギーやコストがかかるため中小企業では難しい。同社は自社開発のモノのインターネット(IoT)システムなども駆使しながら、その壁を驚きの着眼点で乗り越えた。

「医療現場の抗菌」を塗装で実現

埼玉県狭山市にある久保井塗装

 久保井塗装は従業員15人ほどで、自動車部品加工で鍛えられた高品質な量産品の塗装が得意な中小企業。だが、一般的な町工場のイメージとは異なり、「研究開発型工場」を標ぼうする。培った塗装技術とノウハウを生かし、塗膜に特別な機能を付与した機能性塗装の自社開発も手掛けている。

 最近では「99.9%抗菌の塗装」を塗料メーカーなどと共同開発した。医療現場で使われるOA機器に採用されている。
 この抗菌塗装は、医療機関から要求される「抗菌活性値2.0以上」の基準を満たす。これは菌が付着して24時間後には99%以上が死滅する水準だ。

 窪井社長は「一般製品で掲げられる『抗菌』は付着した雑菌の増加を抑制できる程度で、医療現場に必要な性能を持っていない。わが社の抗菌塗装を専門機関で検査すると抗菌活性値は3.6を記録するなど、強力な抗菌作用を持つ。また、ロットごとに製品サンプルを試験し、抗菌効果の証明書を添えて納品しており、安心と安全を保障する」と胸を張る。

「工業塗装業界に革新を起こしたい」と窪井要社長

 この抗菌塗装の技術は、経済産業省の「戦略的基盤技術高度化支援事業(サポイン事業)」の支援を受けて開発した。
 サポイン事業は、中小企業と研究機関などとの連携を促し、ものづくりの基盤技術の向上を図る事業。製品の研究開発から試作、量産と販路開拓までを支援する。

 工業塗装分野は2012年まで、サポイン事業の対象ではなかった。そこで、業界として09年から国に積極的に働きかけた。この音頭を取ったのが窪井社長だ。3年をかけて、塗装技術がサポイン事業などの対象になる「高度基盤技術」の認定を受けた。
 「塗装業界は変化が少なく、旧来の方法で塗布する仕事がほとんど。しかし、塗料や塗装方法を研究すれば、製品の表面に新たな機能を与えられる。工業塗装が日本の製造業の強みになるよう、塗装技術に革新を起こす」と意気込む。

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