エプソンはさまざまなソリューションで生産現場の難題解決を共に目指す Vol.5
高い満足度
最初に講師として登場したのは、セイコーエプソンマニュファクチャリングソリューションズ(MS)企画設計部の仁宇昭雄アシスタントマネージャー。2006年入社のベテラン技術者という立場から、エプソンの会社概要やMS事業部の概要、産業用ロボットの商品企画から発売までの詳細なフローなどを学生に分かりやすく紹介した。
教育機関などでも広く使用されるインクジェットプリンターや液晶プロジェクターから、祖業であるクオーツ式時計や産業用ロボットまで、エプソンの多岐にわたる事業を説明して学生の興味関心をつかむと同時に、産業用ロボットメーカーとして目指す方向性や、力覚センサーや分光ビジョンシステムなどのコア技術の特徴も解説した。
続いて、6軸垂直多関節ロボット「VT6L」が商品化されるまでのプロセスを詳しく紹介。「商品企画」「設計」「製品評価」「量産~送品」の各プロセスにおいて、どの部署がどういう形でVT6Lの商品化に携わっているかを語った。
VT6Lはコントローラー内蔵型の省スペースな垂直多関節ロボットで、シンプルなセットアップ性とコストパフォーマンスの高さに特徴を持つ。加工機や検査機に部品を供給する作業を人手からロボットに置き換えることを狙い、VT6Lの商品コンセプトを企画したという。仁宇アシスタントマネージャーは「新製品の開発には多くの部門が関わり、開発期間も長くなる。次の新商品開発につなげるためにも、企画通りに商品が開発できたのかを振り返る活動も必要」と話した。産業用ロボット開発の第一線で活躍する技術者の“生の声”に、多くの学生が真剣に聞き入った。
仁宇アシスタントマネージャーは講演の最後に「社会では決まった答えのない問題に挑戦する姿勢が求められる。一人では解決できなくても、いろいろな人と連携しながらチームで仕事に向き合うことが大事だ。皆さんも仲間とコミュニケーションを取りながら、一つの課題に取り組む姿勢を今後しっかりと学んでもらえれば」とエールを送った。
2人目の講師は、エプソン販売MS技術課の遠藤綾乃さん。遠藤さんは社会人2年目の若手社員で、学生により近い立場から自身の主な業務フローなどを発表した。
「エプソン販売はセイコーエプソンのグループ会社で、セイコーエプソンが製造した商品を国内で販売する。セイコーエプソンが『ものづくり』を担うのに対し、エプソン販売は商品の販売を通じてお客さまの課題を解決する『こと売り』を担う」と両社の違いを説明。その後、自身の業務内容を「ヒアリング」「実験」「トレーニング」「問い合わせ対応」の4つのステップに分けて紹介した。
遠藤さんは最後に「1年間で感じた仕事の面白み」として、「お客さまの要望に応えるために試行錯誤しながらロボットの動作を作り上げる面白さと、お客さまの製造過程を知ることで身近な商品の裏側が見える面白さの2つがある」と業務経験から得られたやりがいを学生に語った。

出前授業で講師役を務めたセイコーエプソンの仁宇昭雄アシスタントマネージャー(=写真左)とエプソン販売の遠藤綾乃さん(=同右)、沖縄工業高等専門学校の武村史朗教授(=同中央) ※C4の動作を停止した上で写真を撮影
出前授業が終了した直後に、学生にアンケート(有効回答数57件)を実施した。「とても満足」「やや満足」との回答が全体の約9割を占めたという。普段の授業ではなかなか聞けない内容だったこともあり、学生の満足度は全体的に高かったようだ。
また、「企画から設計、試作、試験評価、営業まで、商品ができる流れを知ることができて良かった」「後期にある産業用ロボットの授業が楽しみになった。早く授業でロボットのプログラミングに取り組みたい」「勉強は苦手だが、会社では答えのない問題にも取り組まなければいけないと聞いて面白そうだと思った」「高い技術力を持った企業の産業用ロボットが身近にあり、それを触れられる環境にいる自分たちは恵まれていると感じた。そこから多くのことを吸収したいと思った」など、前向きなコメントが目立った。
<次ページは沖縄工業高等専門学校の武村史朗教授と出前授業を受講した学生へのインタビュー>