2020.07.02
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試行錯誤の30年、車のノウハウを食品でも/エス・イー・ティー

リスクに備え、全国展開

「他の地方からの依頼にも応えられるようになった」と高橋良昭社長

 SIerには地元に根ざした企業も多いが、SETは全国各地、または海外でも事業を展開する。  全国展開する商社と取引することで、他の地方からの引き合いや受注があるからだ。同社の従業員数が60人規模になったことで、サポート体制を整えられたことも大きいという。  「愛知は自動化ニーズの高い自動車産業が盛んな土地柄のため、受注額だけで考えれば他県に出る必要はない。しかしリスクの分散を考えると全国展開は大事。自動車以外の業種からの引き合い獲得に力を入れるのも同じ理由」と話す。

どんな要望でも困らない

さまざまな依頼に試行錯誤する中でノウハウを積んだ(提供)

 「創業者の口癖が『(依頼する)相手が人間なら、(引き受ける)こちらも人間。どんなことでもやってやれないことはない』で、いろんな依頼を受けた」と高橋社長。  予算や納期に制限がある中で、設計や製造の現場が試行錯誤して要求に応えた。「大変だったが、だからこそノウハウがある。今では、よほど特殊な装置でなければ、お客さんから何を言われても困ることはない」と自信を見せる。  0.8秒ごとに製品が流れるような自動車部品の自動化は、他業種と比べて要求されるレベルが高い。業種が変わっても自動化に求められる基本的な技術やノウハウは変わらないため、どんな業種からの依頼でもSETの強みを生かせるという。

「考え方」を売る商売

「まだ一件だが、食品関連の仕事も受けた」と高橋社長

 最近では、食品メーカーから製造工程を自動化したいとの依頼が入った。  これまで手作業でしてきた一連の作業を自動化したいという。自動車部品に比べればスピードは求められない。その代わり、食品を扱うため衛生基準が厳しい。毎日解体して掃除をする必要がある。  そうした業種の違いによるニーズの変化を理解した上で、現場作業者でも簡単に解体、組み付けのできる設計にした。多関節ロボットは使わず、単軸ロボットや補助器具を組み合わせてコストを抑えたシステムを提案した。  「車が欲しいと言う人の全てが高級車を欲しがっているわけじゃない。同じように自動化できればなんでもいいわけではなく、お客さんに合った提案が必要」と高橋社長は指摘。SIerという職業は「ロボットやハンドなどを取り付け動くようにするだけではない。会社に蓄積された自動化の『考え方』を形にして販売する商売」と強調する。

(ロボットダイジェスト編集部 渡部隆寛)

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