生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2022.05.27

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#54] しんどい仕事は人任せ? いや、ロボ任せ

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週もほんと疲れたわ。

――おや? すっかり夏の装いですね。今夜もお疲れのようですが、大丈夫ですか?
 いや、そうじゃないんだよマスター。ここのところ毎回話してる、例のセントレアの空港島で開催される展示会の開幕まで1カ月なんで、準備が佳境を迎えててんやわんやなんだ。初公開するロボットシステムが不調で、想定通りに動かなくてさぁ。あれやこれやと原因を探ってるところなんだ。倉庫の片隅で作業をしてるんだけど、普段は空きスペースだからか冷房の冷気が届かず、暑くて暑くてたまらんのよ。クールビズなんてしゃれたものじゃなく、上着はもちろんシャツ姿でも暑くて、しまいにはみんなTシャツ1枚で作業してるんだよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。えっと、今夜のおすすめは「夏野菜のバーニャ・フレッダ」って、何だ? バーニャ・カウダなら食べたことがあるけど、まぁいいやそれちょうだい。そうそう、野菜って言えばさぁ、先週も話したけど、農業でロボットが使われ始めてるって言ったじゃん。あれこれ調べたら、実際に使われてるんだよ。展示会の準備も大事だけど、オレの本業は営業じゃん。あれこれ調べて実際に見てきたんだよ。いよいよこんな時代が来たんだなぁって、感慨深くてさぁ……………。



 マスターにはむかし話したかな。オレの父親は重工メーカーで働く職人だったんだ。職人と言えば聞こえはいいけど要は何でも屋。大学を出ていない、専門を持たない「職工」で、クレームや困り事があれば、真っ先に現場に向かって事情を聞きに行く役目だった。

 その場で対処できれば対処し、製造工程や部品の不備、設計の不良であれば、上司である、学士や博士の技術者に報告する。製造工程の不備でリコールともなれば、年下の上司を連れて全国行脚する、なんてこともあったらしい。

 父親が小型エンジンを担当していた時、農業用機械に取り付けたエンジンの不調が相次いだ。納屋から出した田植え機のエンジンが不調との連絡で、4月から5月の終わりごろまで、田植えの時期に合わせ、九州から北上して青森まで対応してた。

 「北上」と言ったけど、コメは地域や作柄によって、田植えの時期が早かったり遅かったりする。そうすると、九州から四国、中国地方から関西へと、順に北上するのではなく、九州から関西に行き、次は山陰や四国に戻ったりと、毎週のようにあちこち出張を繰り返していた。

 オレの今回の視察先、新潟に向かう電車の車窓は、そんな父親の思い出を思い起こさせるのどかさだった。この地方の田植えは、例年ならもう少し遅く、6月6日の芒種(ぼうしゅ)を過ぎたころ。今年は特別に、田んぼへの水張りが少し早められた。ある実験のためにね。

 田んぼには、イネだけでなく、イネ以外の雑草も生える。雑草が増えればそれだけ、イネに吸収されるはずの栄養が取られてしまうから、雑草はないほうがいい。これまでは農家が、田植え前と田植えが終わった後に、田んぼに入って、手でむしっていた。

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