生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2022.05.20

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#53] 働き方? いや、働かせ方改革? 働きやすい環境を

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週もほんと疲れたわ。

――おや? 今夜もお疲れのようですね。お身体は大丈夫ですか?
 いや、そうじゃないんだよマスター。ほら、先週も話した、例のセントレアの空港島で開催される展示会に出展するんで、その準備でおおわらわなんだ。どうも、地元の小学生が社会見学に来るらしくて、それをぽろっと部長に話したら大乗り気でさ。「未来のウチの社員になるかもしれん!」と、急きょあれこれ変更することになったんだ。「ウチのブースの前を通るかも」って、子ども向けのノベルティーグッズを増やしたりでさ。ただでさえ準備で忙しいのに、今どきの子どもが何に興味を示すかなんて分かんないから、子どもがいるウチの社員に声かけたりして。「着ぐるみでも着るか?」なんて、さっきまで大真面目に会議してきたところなんだ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。えっと、今夜のおすすめは「生ハムとチーズ、野菜のカルパッチョ」かぁ、しゃれてるなぁ。野菜って何が入ってるの? そう言えばその展示会でも、野菜を収穫するロボットが出るって話でさぁ、オレも興味津々なんだよね。展示によっては、オレも工場ばかりじゃなくて、今後は農家を一件一件回って営業しなきゃならなくなるかもしれないからさぁ。そうなったら社用車の中に、安全靴やヘルメットじゃなくて、長靴とか麦わら帽子も用意しなきゃなぁ。また、ネット通販でポチッとしなきゃね。そうそうマスター知ってる? 最近はネット通販の物流センターでも、ようやくロボットが入り始めたんだってよ。オレが昔、営業に回った時は「遅い」だの「そんなおもちゃを相手にできるか!」なんて、評価は散々だったけど。ようやくそんな時代が来たんだよなぁ……………。



 機械商社から転職した直後だから、もう10年ほど前になるかなぁ。目ぼしい工場にはあらかた、マシニングセンタとか旋盤の横にロボットを入れて、「次の市場を見つけなきゃ」と考えてた時だった。

 オレたちSIerは、1つの業界でロボットを導入して評判を呼べば、あとは評判を聞いた別の会社からの依頼や、入れた会社が増設したいって希望を聞いてれば、しばらくは順調に受注が取れる。でも、それで満足しちゃうと、次の一手が遅れるんだ。

 だから、順調に受注が取れている時こそ、次に備えて、あれこれロボットの導入先を考えてるんだ。

 そんな時にふとひらめいたのが、物流センターだった。オレがまだ学生だったころ、医薬品の物流センターでバイトした事があるんだ。製品がベルトコンベヤーを流れ、ピッキングする商品の棚が光ってピッキングする商品を知らせ、右横に個数が表示される、当時としては最先端の物流センターだった。

 「今どきの物流センターはどうなってるんだろう?」と思って、当時の物流センターをのぞいてみたら、医薬品業界も各社が合従連衡を繰り返した後で看板の社名が変わり、センター自体も統廃合で閉鎖されていた。その後そのセンター跡地はドラッグストアに変わったから、皮肉なもんだよね。

 でさ、社名が変わった会社にコンタクトを取って、郊外に移転した物流センターを見せてもらったわけ。たしかに自動ラックとかベルトコンベヤーは最新の機器に変わって24時間稼働になってたけど、やってることは20年前のオレの学生時代と変わらなかった。

 で、翌週時間をもらって、センター長と本社の物流課長を前にロボットを導入した自動化のプレゼンをしたんだけど、さっぱり興味を示さなくてさ。けど、センター長のカバン持ちで付いてきた現場の係長だけは、興味を示してくれた。

 その係長はササキ君って言ったんだけど、そうそう思い出した、佐々木博係長だ。プレゼンの後、喫煙所で一服してたら佐々木係長が入って来てさ。佐々木家は家でロボット掃除機を使ってて、オレん家のとメーカーが同じだったのが分かって盛り上がったんだ。

 そこで佐々木係長は、「センター長は私が説得しますから、ぜひセンターでもプレゼンしてほしい」と頼まれた。「現場の人間さえ納得させれば、きっとうまくいくと思う」ってさ。「じゃあ」ってんで、当時の自動搬送車(AGV)とか、産業用の双腕ロボットのビデオを持ってセンターでプレゼンしたんだ。

 センターの若手連中は、結構いい反響だったんだ。「これで腰痛から解放される」とか「繁忙期の残業が少なくなる」とか。でも古株の社員からは総スカンだった。

 「そんなおもちゃみたいなのに任せられるか」とか「こんなノロい代車じゃいつ作業が終わるんだ」とか。「こんなのが床をはいずり回っちゃ邪魔でしょうがない」とかさ。結果からすればプレゼンは散々だった。 

 佐々木係長ら、若手は違った。「この場は却下されてもいい。でも必ずこうしたロボットが現場に導入される。こうしたロボットが現場に導入された時に、どうしたら使いこなせるか、今から考えなきゃ」と言ったんだ。周りの若手社員たちも、がっかりしてた。

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