生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2022.04.01

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#48] 4月バカに病院を考える

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

――― ――― ――― ――― ――― ―――

――いらっしゃいませ。
 マスター元気? オレはもうダメだ……、やっぱ帰るわ。

――えっ! 来られたばかりじゃないですか。どうかされたんですか? 何か悩みでも? まずはお座り下さい。
 うっそ、ぴょ~ん。いやぁ、エイプリルフールだからさぁ。そいでもって、さっき3回目のワクチン打ったばかりでさぁ。いやぁ、高熱が出ると思って覚悟してたんだけど、2回目と同じでなんにもなくて。いやさぁ、ウチの会社の人間は、ワクチン接種の2回目や3回目でみんな「高熱が出た」とか「ウデが腫れた」なんて言うもんだから「オレもどうかなぁ」と不安だったんだよ。「今夜も店には行けません」ってメール打とうとしたんだ。でも「待てよ。打ってからかれこれ3時間ほど経つけど何もないなぁ」と思い直して。あまりにも肩透かしだったんで、急きょ引き返してマスターのところに来たワケ。悪い悪い。いやあ、今週もほんと疲れたわ。

――まったく。いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅぎゅっとしぼってね。えっと、今夜のおすすめは「つぶ貝とアスパラのガーリックバターソテー 」かぁ。いつもしゃれてるねぇ。アスパラガスも、今が旬だもんね。旬といえばそうそう。この前まで行列が出来てた町のPCR検査場だけど、今朝通りかかったら「今なら無料で~す。お気軽にお立ち寄りくださ~い」って大声で呼び込みしてたよ。あちこちに検査場が出来たらしいけど、そろそろ旬が過ぎたんだろうねぇ。週末なんて、幹線道路はどこも大渋滞だもん。大渋滞といえば思い出すよ。医療品メーカーの物流倉庫の案件を。ついこの前までは相当、大変だったらしいんだよねぇ……………。



 病気やけがに全く縁がないオレにとって、病院なんて年に一度の健康診断ぐらいでしか行かないし、歯医者なんて、小学生の時に入れた詰め物が取れた時ぐらいしか行かないから直近でも5年前、その前となるといつ行ったのかさえ思い出せないぐらい。仕事で出向くまで、病院のバックヤードがこんな事になっているなんて知る由もなかった。

 オレが想像する病院って、手術に使うメスとかハサミとか縫い針とかって、看護婦が、おっと今は看護師か。看護師が仕事の合間に洗って乾かして、紫外線を通す機械で滅菌するぐらいのイメージでしかなかった。今はテレビも見ないから若かったころ、20年~30年前に見た映画やドラマで見たシーンからでしか想像できなかった。

 で、東京にある外資系の医療品メーカーから声がかかってさ。「はいよ~」って軽い気持ちで出かけたらびっくりした。想像とはまるで別世界、異次元の世界だったんだから。

 手術用具ってさ、例えば胃がんとか大腸がんとか、脳梗塞だとか血管が切れたとか、腕の骨折とか手首の骨折とか、指先を切ったとか、患者の病状や手術などに応じて、医者や看護師が使うメスやハサミ、血管から医療用機器につなぐチューブとかが、ワンセットのパッケージ商品になっているんだ。

 病気に縁のないオレが説明するとボキャブラリーが少なすぎてうまく説明できないんだけど、とにかく患者が運ばれてきて、医者が診察して病名や症状が診断されると、病気や診断に応じた処置や手術用に詰め合わせされたキットが用意される仕組みなんだ。

 その処置や手術のキットをあらかじめ用意するのが医療品メーカーで、万が一の不手際や医者が失敗した時の最悪の状況も含めて、処置や手術に必要なものは全て1つの手術キットにまとめられている。

 病院からすれば、忙しい仕事の合間に、次の処置や手術に備えてあれこれ必要な道具や機器をひとつひとつ間違いなくそろえる必要はないし、足らなかったり、在庫が少ないものをいちいち管理して、発注したり、それを受け取ったりなんて手間のかかる仕事をする必要がない。医療品メーカーがふだんから、その病院での使用状況を分析して補充してくれる。つまり需要予測を基に適正な在庫を、病院の倉庫に納品する仕組みが出来上がっている。 

TOP