生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.02.26

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#15]木を見て森を……

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――今日は三つ揃え、スリーピースですか、どこか堅い席にでも?
 今日は旧暦の小(こ)正月で、本来なら今日までが松の内。元服(げんぷく)の儀を迎える日でもあるからね。ハタチの時を思い出して、気分を新たにしなきゃと思ったんだよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「小豆のミルクチャウダー」か。暦(こよみ)を分かってるねぇ、マスター。小豆って、インゲンと同じマメ科で、原生種はツルみたいに木に巻き付くんだってさ。木と言えば思い出すよ、岡山の石田の案件を……………。

 「ロボットは賢いか?」と聞かれてどう答えるか。これは結構難しい質問なんだ。馬鹿正直に同じ作業を、文句も言わずに延々と繰り返してくれる。2つの作業を教えれば2つ、3つの作業ならば3つ。教えた数だけ作業をこなしてくれる。

 かと言って「賢くない」と言うのは少々乱暴だ。ロボットのコントローラーが良くなり、だんだん知能的で汎用的になった。それによってロボットに、より多くの、より複雑な動作でさえ簡単にさせられるようになった。

 あとは、教える側の人間が工夫して、作業の規則性や法則を見つけ、それを基にロボットに作業を教えれば、こなせる作業の幅は広がる。ロボットがつかんで運ぶ物や、作業内容、動作が変わっても、わざわざ一から教え込む必要はない。そういう意味では、賢いかどうかより、賢く使いこなす、人間の能力次第とも言える。
 
 JR岡山駅前と言っても、華やいでいるのは岡山城や後楽園に続くアーケードやデパートがある新幹線口の東側だけで、在来線側の西口広場側は閑散としている。そこからタクシーで15分、歩いてでもいけるぐらいの距離に石田シール工業がある。

 元は印刷会社だった石田シール工業は、活版印刷が下火になったのを機に業態を転換し、ラベルシールの印刷と製作へと切り替えた。クッキーやチョコレートなどの箱菓子や、スーパー店頭のトレーに入った肉や魚などに張る「サンマ1尾 100円」とか「3割引き」「半額セール!」などのシールの製作を得意としていた。

 得意先のとあるスーパーから、スーパーが自社で調達した加工食品に張るシールの製作に加え、その加工食品の箱へのシール張り付け作業も受託することになった。

 瀬戸内海で採れたニシン科の小魚「サッパ」を酢漬けにした「飯借り(ママカリ)」をパックし、箱詰めしたものの上に「地元 瀬戸内産」と印刷した円型シールを張るという。今後も同様の案件を開拓したいから「ロボットで自動化したい」との依頼だった。さほど難しい案件じゃないから、ウチの若いヤツに行かせたんだ。

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