生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.10.30

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#4]赤い兵馬俑

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話。アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――おや? 今日はもう、コートなんですね?
 ここんところ朝晩はかなり冷えない? パジャマのまま郵便受けに朝刊を取り行ったらぶるっとしてさ。だから出がけに、タンスの奥にあったコートを引っ張り出したんだよ。ひと月前は「まだ暑い」なんて言ってたのにね。まいっちゃうよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「カニコロ&春巻きチョリソー」って中華か、スペイン料理か? フレンチから中華、和食とマスターも芸の幅が広いねぇ。中国と言えば思い出すよ。雨後のタケノコのようにボコボコ出てきた、中国の新興電気自動車(EV)メーカーの案件を。10年前、いや8年前だっけなぁ、中国に出張したついでに「たにがわ先生、ぜひご助言を」なんて言われて舞い上がっちゃってさ。先生なんて言われるの初めてだからさ。車体の塗装をロボットで自動化するって案件だったなぁ……………。

 上海に出張したら、予想以上に早く仕事が終わって2日ほど空いたんだ。上海には何度も行ったし今さら観光する気もないんで、朝からビール飲んでたんだ。そうしたら現地法人の董事長の王(ワン)さんがホテルに遊びに来て「たにがわ先生、暇なら友達の会社も手伝ってもらえませんか?」って言うんだ。国内線で1時間の場所に華南省の鄭州市がある。1時間と言っても、1000km近く離れた場所なんだけど、新進気鋭のEVメーカーだって言うし、暇つぶしに午後から出かけることにしたんだ。

 空港からクルマで1時間ぐらい走ったかな。工業団地を抜けた山の中腹に小さな工場があってさ。敷地だけは広いが、トタン屋根のいかにも町工場って感じ。開発途中の壊れた試作車が何台も放置されてて、解体工場みたいだったよ。

 工場にしてはえらい静かだけど、鉄のドアを開けたらすごいんだ。現地メーカーの赤いロボットが、自動車の生産ラインを挟んで、まるで秦の始皇帝陵にある兵馬俑(へいばよう)のようにずらりと並んでる。中二階に上がって工場全体を見下ろすと、これが圧巻なんだ。

 工場長と名乗る劉(りゅう)さんに話を聞くと、とんでもない事を言い出すんだ。大鵬汽車という、2年前に起業した新興EVメーカーで年間二千台ほど売れる。資金調達のめどもついたんでロボットを入れて大量生産に乗り出した。まずは塗装工程の自動化を、中国のロボットメーカーに依頼したらしい。

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