生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2022.02.18

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#42]「チッキ」を知るのは60代? チェキなら知ってるけどね(下)

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――あれ、いつものマフラーはどこかにお忘れですか?
 いやね、明日はもう雨水だからさ。春はもうそこまで来てるから、そろそろ準備しなきゃなぁと思ってね。試しに今週から、マフラーと手袋はウチに置いてきたんだけど、やっぱりまだ早いね。「三寒四温(さんかんしおん)」で寒い日が3日、その後4日ぐらいは暖かくなる、それを繰り返すって言うけど、やっぱり寒いわ。昼間でも曇って陽が当たらない日や強い風が吹くと、暑がりのオレでもさすがに寒いわ。かといって、通勤電車の中は暖房が効きすぎてやたら暑い時もあるからね。電車を降りてホームに立つと、ぶるっとくる時もあるし参っちゃうよなぁ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。えっと、今夜のおすすめは、おおっ、そうそう、マリネじゃなくて、何だっけ? ずっと頼んでて食べてないやつあったよね。今夜こそそれ頂戴。何かの話の途中だったよね。そうそう、バイト先だったひろごう、広島県合同貨物運送の話だったね。大手の運送会社でも、宅配便の配達はドライバーから嫌われてたって話だったね。何せ開店休業状態で、そこの会社で働く社員でさえ誰も好んで自社の宅配便って使ってなかったもんなぁ……………。



 宅配便って、大手の運送会社が運ぶ他の荷物のように「特別積合せ貨物運送」で運ばれる荷物の1つで、法律で特別に宅配便が定義されている訳じゃないんだ。じゃあ何で区別しているかと言うと「1枚の送り状に1個の荷物」ぐらい。試しにコンビニで、同じ住所に段ボール箱を2個送ろうとすると、送り状を2枚渡されて「同じ住所を書け」と言われるだろう。

 これを運送会社の支店や営業所の窓口に持って行くと、気が利く社員やアルバイトがいれば、コンビニで渡される送り状とは別の送り状が渡され「2個口の①」「2個口の②」などのラベルを、段ボール箱に貼ってくれる。つまりこれは、宅配便の扱いではなく、大口貨物の扱いで運ぶってこと。場合によっては、宅配便2個よりも、値段が安くなることもある。

 利用者の側は、そんな違いなど知らないし、宅配便でも大口貨物でも配達先が同じなら、同じ運行トラックに載せられて最寄りの拠点に運ばれ、拠点で配送トラックに積み替えられて、同じように配達もされる。実際に配達するドライバーだって、若手や、仕組みや法律上の定義に関心がない社員は、違いなど知らずに配達しているだろうね。

 宅配便に参入した大手の運送会社は、ネコやイヌ、コアラやカンガルーなど、それぞれ動物のキャラクターやネーミングを付けたサービスを始めた。でも、ひろごうのドライバーと同じように個人宅への配達を嫌がり、ヤマト運輸のように個人向けサービスに注力できなかった。ヤマトや佐川急便が偉いのは、個人客にウケるよう、カラフルな段ボール箱を採用し、ドライバーに洒落た制服を支給するなど、女性や子どもにも受け入れられるよう努力したことだ。一方ではちゃんと、会社などの法人の貨物だって従来通り扱ったし、大口貨物だって引っ越し荷物だって、海外向けの荷物だって扱ってきた。

 宅配便も規模の商売。たくさん荷物を扱えば扱うほど、荷物1個当たりのコストは下がる。「貨物追跡」などの情報システムの構築にはカネがかかるが、一度きちんと構築すれば、あとはアップデートで済む。システムで業務の効率は飛躍的に上がる。

 これは使う道具にも言える。同じ携帯端末、同じトラックを大量に発注すれば、トラックだって安く買える。物流拠点だって、同じ設計の建物を各地に建て、同じ自動機器を採用すれば安くなる。大都市の近くに大規模なセンターを建てれば、荷物を行先ごとに仕分けるスピードも、トラックからトラックへの荷物の積み替えも早くなる。しかも、ほとんどの作業が自動だ。力まかせの仕事なんてまずない。体力に劣る女性でも、楽に作業ができる。

 運送会社間の競争は、荷物を集めるのはもちろんだけど、自動化で効率化を進める競争でもあったんだ。その後は運送会社同士の競争に加え、民営化された郵便局の「ゆうパック」も競争に加わった。結局、現在まで勝ち残れたのは、ネコと飛脚、ゆうパックなど数社だけ。日本最大の運送会社・日本通運が始めた「ペリカン便」なんて、今の若い人は誰も知らないだろうなぁ。

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