生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.12.17

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#36 ] 地震、雷、火事、…停電?

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――なんだかお疲れのようすですね、大丈夫ですか?
 まぁね。師走だからと月の初めから走り続けたからね。今年も残り10日あまりだから、もうひと踏ん張りだね。マスター、心配ありがとう。今日は「飛行機の日」って言うじゃない。俺は昔から飛行機が大好きでさぁ、明日は久しぶりに空港の近くにでも行って、飛行機でも眺めてくるかなぁ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。えっと、今夜のおすすめは「エビとアボカドのバジルソース」かぁ、パスタかなこれ。いいねぇ。イタリアンが続くねぇ、マスター。そういえば、以前話したテーラーのハマヨシが言ってたけど、ミラノのテーラーはスーツを仕立てる時に型紙を引かないんだってさ。採寸を基に感覚で、いきなりチョ-クで生地に線を引き始めるんだって。客とテーラーの感性がマッチすれば、素人の俺でも分かるぐらいエレガントな仕立てに仕上がるんだけれど、実は結構な比率で駄作も生まれているらしい。そういやイタリアでも多いらしいけど、最近は日本でも地震が多いね。この前出張で出かけた神戸でも地震があって、交差点で信号待ちしてたらクルマがぴょんぴょん跳ねてびっくりしたよ。怖いものと言えば地震、雷、家事、親父。雷と言えば思い出すよ、キッチンやリビング用品のプラチナ金属の案件を。あれにはホント、びっくりしたなぁ……………。



 プラチナ金属は新潟県燕市に本社を置く、フライパンや圧力鍋など、主に金属製台所用品を製造するメーカーだ。キッチンやリビング用品ブランドの「プラチナライフ」があり、アウトドア用品の「バッファローズ・キャプテン」のブランドも、最近のアウトドアブームで広く知られるようになった。アメリカバイソンの輪郭を使ったブランドロゴはそこそこ有名で、週末や休日の公園ではロゴが入ったテントがずらりと並ぶほどだ。

 メーカーといっても最近はほとんど自社では作らず、中国やベトナム、タイの工場で作らせ、もしくは商社として買い付けたものをプラチナやバッファローブランドとして売っているのがほとんど。全国各地のホームセンターやスーパー、家電量販店の日用品売り場、最近はめっきり減ったけど、いわゆる100均、100円ショップでも販売してきた。

 毎年過去最高の利益を更新し続けるのは、メーカーとしてより、商社として得る利益のためと言った方がいい。少し前までは「健康のため」「通勤で運動」と大々的にPRし、中国で作らせた折り畳み式の自転車を大量に売りさばいて利益を弾き出した。最近では「巣ごもりから脱出」「三密防止に」と宣伝し、釣り用品などをせっせと取り扱って利益を上げている。プラチナ金属の営業マンは販売力よりも、世の中の風を感じ取る力が試されると言っていい。

 3年前に、プラチナ金属の物流センターの仕事を頼まれたことがある。とにかく「在庫命」で「欠品があってはならん」というのが、オーナーでもある美波高雄社長の商売鉄則。「そのための倉庫が必要ならいくらでも建てろ」との方針だったが、世の風を読む商売で風向きや風力を読み間違うと、100円ショップで投げ売るしかなくなる。最近でこそ100均の店頭に300円の商品も並ぶようになったが、どれもこれも100円で売り切らないと、倉庫の保管料だけでもバカにならなくなった。これが美波社長の逆鱗(げきりん)に触れ、全社に向けてカミナリが落ちた。

 1年かけて物流センターを設計して建設し、センター内で使う保管ラックやラックの間を縫うように走る自動機器を設置。1カ月かけて商品を新センターに移動後、さらに1カ月の試用期間を経て2年前の1月に稼働した。総工費は15億円だった。

 新センターでは実験的な試みも取り入れた。スウェーデン製のロボット倉庫システム「ロボチェンジャー」を導入したのだ。

 ロボチェンジャーは、専用コンテナを保管ラック内に収納し、グリッドと呼ぶアルミ製のレール上を箱型の自走ロボットが走り回り、指定された商品をピッキングする仕組みだ。通常の倉庫と違い通路はなく、天井の高さいっぱいまで倉庫容積を使い切れる収納・保管・搬送システムと言っていい。

 通常の物流センターでは、商品が並んだ棚の間を、指示書とピッキング指示が表示される小型端末を手にした作業者が歩き回り、自分の目と手で商品を取り出す。作業者は1日で7~8km、場合によっては10kmに及ぶこともある。

 ロボチェンジャーを導入したロボット倉庫では、作業者はロボットがピッキングしたコンテナを、ポートと呼ぶ入出庫口の前で待つだけでいい。指示書に印字された数だけ商品を取り出し、コンテナをポートに戻せば自動で商品は保管場所に戻される。

 ポートの前で待つだけで、指示書通りに商品が運ばれ、指示書通りに商品が集まれば、まとめて次の検品工程に流すだけ。目の前を流れるベルトコンベヤーに乗せるだけで、次の検品工程に進む。作業者はその場からほとんど歩く必要もない。

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