生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.10.15

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#28]祝!宣言全面解除(下)

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやぁ、今週は特に疲れたわ。来週から名古屋で始まる展示会の搬入が始まるんでてんやわんやだよ。出展製品を壊れないように梱包して、現場で効率良く開梱して展示できるよう木箱に番号振ったりさぁ。学生時代の学祭前夜の雰囲気ってのかなぁ。緊急事態宣言開けの久しぶりの展示会なんで、みんなテンションが上がっちゃってさぁ。ずっと疲れっぱなしだわ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで?
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「ズッキーニの豚巻きフライ」か、いいねぇ。ジョンにも合うしなぁ。おおっ、コルトレーンのサックスか、いい音してるねぇ。えーっと、何かの話の途中だったよね。梶が谷運送! 社名が変わって梶が谷トランスポートの案件だったね。追い込まれて必死で取り組んだ2カ月間だったなぁ……………。



 厚木街道沿いにあった梶が谷運送は、大手酒造メーカー「イチノトリ」の仕事で一気に業績を伸ばした。ビン入りの酒類を大量に扱う荷扱いの難しさや、酒税の処理がからんだり、配送先のカギを預かる特有の商習慣、“ネズミ”がたかった荷物の通関業務の面倒くささなど、他の運送会社と比べても特殊な部類と言える世界だった。

 まぁ、運送会社なんてどこもいつも人手不足だし、特に若者の定着率は低い。それでも梶が谷は別格だった。仕事はキツイがその分の高給を約束した飛脚のマークの運送会社は有名だが、そこに転職した梶が谷のドライバーは「仕事は全然キツくない」と言い放ったとか。

 物流センター業務も、国内市場への参入が相次いだ外資系の物流会社を含め、どこも引き受け手がなかった。だったら、腹をくくって自社でやるしかない。いろんな会社に声をかけたらしいよ。どこの業界にもいるけど、それこそ自称コンサルタントを名乗る怪しい人まで。いろんな会社や専門家に相談するうちに、遠い世界の機械商社にいたオレの耳にも届いたってわけ。

 梶が谷の要望は「とにかく自動化」ってワケ。人が居つかないってことは、とにかく人にに頼る作業は減らすってこと。倉庫の自動化は、オレが呼ばれる前に、別の業者が既に着手して完了してた。物流センター中に、最新型の自動昇降機付きの製品ラックがずらりと並び、ピッキング作業の自動化も、あらかた終わってた。

 センターの作業員は、手元まで運ばれてきた酒類の中から必要な本数だけ抜き取り、折り畳み式のコンテナ(折りコン)に入れるだけ。折りコンの中には、ビンが割れないよう、段ボールをシュレッダーにかけたような緩衝材が入ってる。折りコンを目の前のベルト式の自動搬送機に載せれば、次の商品のある製品ラックに運ばれる。

 配送トラックが荷物を積み込む配送センターには、配送先の飲食店ごとに折りコンが積み上げられている。配送センターの床面はトラックの荷台の高さに合わせてあるから、トラックへの積み込みは、折りコン専用のハンドリフトで、積み上がった折りコンをばらす事なくそのままトラックに積み込み、足でリフトの踏み込み式スイッチを踏むだけで、その場で降ろせる。配送を終えて戻ってきた折りたたまれた状態の折りコンは、当時最新だったロボットがトラックから荷降ろししてたよ。

 で、肝心のオレは何を頼まれたかって? 要するに、オレが呼ばれた頃にはあらかた設備の自動化は終わっていて、ドライバー不足問題しか未解決の案件は残っていなかったワケ。人材募集なんてやったことなかったけどさ、オレもイロイロ考えたさ、2カ月もかけて。

 いつものようにこうして飲んでて、最終電車に乗り込んだらさ、網棚の上に週刊誌が捨てられてたんで、パラパラめくってたの。そしたら、見つけちゃったワケさ。

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