生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.10.08

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#28]祝!宣言全面解除(中)

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。

■たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやぁ、今週も疲れたわ。先週も言ったけど、今月20日から名古屋で展示会があって、その準備に追われててんやわんやだよ。まぁ、先週から緊急事態宣言が解除されて開催は確実だから、「中止」や「ウェブ開催」を心配しなくていいのが救いだけどね。それでもずっと疲れっぱなしだわ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダ、いやジョンソーダでしたっけ?
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「ズッキーニとチキンのトマト煮込み」か、いいねぇ。今年は暑さが続くから、今も旬なんだね。今夜もJBLスピーカーとアンプが、いい音してるねぇ。そういえば、何かの話の途中だったよね。あ、そうそう梶が谷運送、今は社名が変わって「梶が谷トランスポート」の件だったね。あれこそ、追い込まれた挙句の、必死の自動化だったなぁ……………。



 厚木街道沿いにあった、当時の「梶が谷トランスポート」。オレが呼ばれたのはまだ機械商社勤めの時で、社名もまだ梶が谷運送だった。大手酒造メーカー「イチノトリ」に可愛がられて一気に業績を伸ばした運送会社だった。酒類を扱う運送会社って、とにかく仕事がキツイんだ。液体が入った容器って、実際の重量以上に重く感じるし、ビン同士もケースの中で微妙に揺れるから、持ち運ぶのが相当大変なんだ。

 誤って輸送途中に割ってしまおうものならもっと大変。流れ出した酒の処理より、濡れた作業着のことよりも、まず真っ先に割れたビンのフタを探し出さなきゃならないんだ。ビールなら王冠、日本酒や洋酒ならキャップ、ワインならコルクだね。今はどうだか分からないけど、当時はこれをメーカーに返却しないと大変だったんだ。

 酒類は製造後、出荷した時点で酒税がかかる。今はどうか知らないけど、当時はフタを見せて売り物にならなかった事を証明できなきゃ、売れなかった酒にも酒税がかかる。酒造メーカーにとっては、これが結構バカにならない金額なんだ。逆に税務署は、破損したと偽る闇転売や、酒税の徴収漏れだけは避けたいから管理も厳しいんだ。

 運送会社の営業担当は毎回、荷主の酒造メーカーに対してわび状を兼ねた始末書と、破損したフタを返却しなきゃならん。フタがなければ、始末書に加えより詳細を記した顛末(てんまつ)書を添えなきゃならない。

 鉄道コンテナや大型トラックでの輸送中の破損事故ならまだしも、酒問屋や店舗への配送時は本当に大変なんだ。マスターのこの店は半地下のフロア以外はエレベーターで行けるけどさ、4階建ての古い雑居ビルの居酒屋なんてエレベーターのない店も多い。

 狭い階段を上がらなきゃならんし、ましてや雨なんか降った日には、道路も階段も滑るからね。トラックから荷物を降ろすときだって、雨に濡れて荷物同士が滑るから、勢いがついてそのまま地面に落としたりね。店内だって、客から見える場所はキレイに見えても、厨房の中はお構いなしで、衛生管理の面から床面に水を流して掃除する店もあるからね。

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