生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.03.05

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#16]港の匠

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
SIer会社の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――珍しく今日は、ラフな格好なんですね?
 来週から「国際物流総合展」が愛知で初開催されるからね。ウチの会社も出展するんで、その準備に大わらわだよ。若手が嫌う雑用が全部、オレんとこに回ってくるんで大変。展示物だけでなく、配布物の管理なんかも含めた展示会のロジスティクス(兵たん)全般まで負わせられちゃかなわんよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「地中海直送ムール貝の白ワイン蒸し」か、しゃれてるね。空輸モノかぁ。輸入と言えば思い出すよ、神戸のひょうご港運の案件を。あれこそ、日本の技を再認識させられたよ。

 神戸港は日本の五大港の1つと言われているが、かつては米国のニューヨーク港、オランダのロッテルダム港と共に、コンテナ取扱個数で世界のトップ3に入る「世界のKOBE港」だった。アジア各国が港湾整備に乗り出し、阪神・淡路大震災での壊滅的被害も重なり、今じゃ東京や横浜、名古屋の各港にも抜かれ、世界ランキングで50位台に沈む。

 コンテナ船で運ばれたコンテナは、通関手続きを経て港湾運送(港運)会社の倉庫に運ばれる。コンテナ1本が丸ごと1つの荷主で占めることもあるが、多くは混載と言って、1本のコンテナに複数の荷主の小口荷物が積み込まれている。

 そうした荷物は、大きなものならフォークリフトで、段ボール梱包の小さな荷物は、人の手で一つ一つ降ろされ、国内の送り先に配送される。コンテナという共通の規格が定められ、ばら積み船からコンテナ船へと輸送手段が変わり、体力勝負の人海戦術だけに頼った作業は大幅に軽減された。でも、最後の最後はどうしても、人手の作業が残る。港湾労働の厳しさは、今も昔もまさにここなのだ。

 港運各社はここを何とか自動化できないかと悩んでいた。神戸の中堅、ひょうご港運もその1社で、新港第三突堤の倉庫の一角にロボットを持ち込み、大学の先生と共同で研究を進めた。実証実験では、結構いい結果が出ていた。パレットに積まれた大小さまざまな段ボール箱を、うまいことつかみ、倉庫の一時保管の棚に置いていく。「これならいける、現場に投入できる」と思っていたんだ。

 当時、経済成長と共に、中国からのコンテナ貨物が増え続けていた。それが、日本ではあり得ない状態で運ばれてくる。今は良くなってるのかもしれないけど、あの頃はコンテナの扉を開けると、段ボール箱が投げ込まれたような状態。海が荒れて積み荷が崩れたなんてものじゃない。コンテナに詰められる最大積載重量こそ守られているけれども、段ボールの上下左右もお構いなしで放り込まれた状態なんだ。

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