生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.02.19

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#14]かゆいっ! かいーぜ!

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――おや? マスクを二枚重ねに、花粉症ですか?
 違う、違うよ。田舎育ちだからそんなしゃれた病気には縁がないよ。客先のビルの警備員から言われたんだよ。「布マスクじゃ入館禁止」って、不織布のマスクを渡されたんだ。別の客先でも言われてね。布マスクの方をポケットにしまうと、なくすかもしれないからそのまま重ねて付けてるんだよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「カリうまレンコンチップス」か。レンコンって花粉症対策になるらしいね? 花粉症だと目が「かゆいっ! かいーぜ!」ってなるけど、かいーぜと言えば……、ふふふっ。思い出すよ、広島の宇品海岸近くにあった無線LANのルーター工場の案件を。要するにあれはかいーぜ、いやカイゼンの事例だったなぁ……………。

 JR広島駅から広島城方面に車を進め、市役所を見ながら国道54号の起点を過ぎてそのまま進むと宇品港、現在の広島港のエリアに出る。そこは大手自動車メーカーの拠点港でもある。系列の部品工場などが所狭しと並ぶ一角に、中堅電子部品メーカー系列の、とある無線LANのルーター工場がある。かつては電子部品を長く製造していたが、無線LAN「Wi-Fi(ワイファイ)」の普及で、ルーターユニットの生産に切り替わった。今も国内で作っているのは、あまり大きな声では言えないが、国防関連の機器に使われるユニットの受注をこなしているからさ。

 中国地方の中核都市の広島とは言え、今じゃ労働人口の減少や高齢化の影響は無視できなくなった。業務の効率化のために「協働ロボット」を、現場作業員の補完として生産ラインに導入する検討を始めた。

 生産ラインは大きく分けて①基板の製造②基板の検査③基板を部品に組み込む――の3工程に分かれ、②と③の一部で協働ロボットを導入することにした。

 具体的には、ロボットが得意な「運ぶ」「定位置にセット」に加え、「グリスを塗る」といった単純な動作を任せた。特に「グリスを塗る」は。ヒトでは量や塗り方にバラつきが出て、時間を経るにつれて単純作業に飽きて不安定になる。まさにロボット向きの作業だった。

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