生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2021.02.12

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#13]エビでタイを……

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話? アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
 マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――おや? 今夜は真っ赤なネクタイですか。白いシャツに映えて粋ですね。
 そうなんだよ、立春も過ぎて今日は旧暦の元日。本来なら今日からが新年なんだ。スーツは無理だけど、シャツとネクタイはおろしたて。去年はコロナで大変だったから、せいぜい気分だけでも切り替えたくてね。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「桜えびと水菜のオイルパスタ」か。へぇ、しゃれてるねぇ。桜エビは初物かな。エビと言えば思い出すよ。塚口のうどん屋の件を。これこそまさに、エビでタイを釣った話だったなぁ……………。

 大阪と神戸の間には、北、つまり山側から南の海側まで、阪急、JR、そして阪神の3本の鉄道が平行に走っている。大阪から尼崎、西宮、芦屋を通って神戸まで。山側と海側では環境が違うから、どの沿線に住んでいるかを聞けば、だいたい暮らしぶりが想像できる。

 臨海地帯あった工場が移転し、跡地にタワーマンションが建って一概に言えなくなったけど、20年ぐらい前まではそれが暗黙の了解。自らの暮らしぶりを笑いに変えられる強さや話術こそが、関西商人の強みの源泉でもある。

 阪急の塚口から武庫之荘といえば、アマと呼ばれる“あの”尼崎にあっても暮らしぶりがいいとされる地域で、塚口駅前には古くから「さんタウン」なんていうショッピングモールがあり、かつてはダイエーがメインテナントだったが、今は言うまでもなくイオンに変わった。

 イオンがまだダイエーだった10年前に、さんタウンの一角にうどん屋が開業した。ただのうどん屋ではない。日本初の産業用アーム型ロボット店長と副店長が調理をする「ろ~麺亭」だ。ロボットと麵をかけただけのベタな屋号だが、そのベタさが関西人の心をがっちりとらえた。西は姫路あたり、北は三田のあたり、東は何と滋賀からも客が来た。

 うどんの調理は安全柵で囲ったロボットがするが、トッピングの揚げ物は店員が調理する。かき揚げとかえび天、ゴボ天とかね。注文や客足が途切れると、通路に面したガラス越しに2台のロボットがダンスや漫才などのパフォーマンスを繰り広げ評判になった。メディアにも取り上げられ、情報番組やバラエティー番組で紹介されると、人気は一気に急上昇した。

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