生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.12.04

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#8]肝はいつも柔らかい?

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話。アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――おや? 今夜はついにウールのコートですか?
 そうなんだよ、月が替わって師走だからね。先月は急に季節が逆回転して暖かい日が続いたけど、12月になるとさすがに寒いね。朝なんか手袋がいるよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「ソフトシェルシュリンプのアヒージョ」か。しゃれてるね。要は小エビでしょ? ソフトと言えば思い出すよ。今じゃ浜松市の一部になった、旧・浜北市の自動車部品の加工会社の案件を。あの件の肝はソフトウエアだったなぁ……………。

 静岡県の西部、遠州にあった浜北市、今は浜松市に編入されて浜北区となった。天竜川を上流に向けて北上したところに、自動車部品を加工する杉浦鉄工所はあった。バイクからオート三輪、軽自動車から普通乗用車へと、日本のモータリゼーションと共に生きた先代から引き継いだ2代目が、受注する部品の種類の幅を広げながら業績を上げ、会社の規模も大きくした。先代の孫、つまり2代目の息子の長男も入社して、ヒラ取締役経営企画部長として頑張っている。創業70年を機に昨年、社名を「スギテック」に変えた。

 電気自動車(EV)やハイブリッド車(HV)の試作用部品の加工を請け負う一方で、先代が受注したバイクのエンジン部品の加工を、今も続けている。他のバイクメーカーがアジアに生産や部品の調達拠点を移すなか、取引のあるメーカーだけが、部品の一部を国内で作り続ける。スギテックはそのサプライヤーの一社で、燃料ポンプの部品を、30年ほど作り続けている。

 2年前の9月に、将来の3代目と目される取締役が、社長に問題提起をした。会社が持つ技術力をさらに高め、今ある技術や人的資産を有効に使うためにも、EVやHV向けの試作部品の受託に重きを置いて、バイクの部品加工をやめようというもの。2代目はもっともだと思う反面、長年続けた加工を断っていいものか、すぐには判断できなかった。

 そこで、機械商社時代からの付き合いの俺が「たまにはウチでお茶でも」と呼ばれた。2代目には判断がつかなかったので、俺が「今後もメーカーとの関係を継続したいなら、バイクの部品加工は続ける。その代わり、そこに人手はかけずに、思い切ってロボットを入れましょう」と提案したんだ。

 せいぜい20mmほどの小さな部品で、まとまったロットの受注もある。穴開けやミーリング加工して、研磨、バリ取りぐらいなら、人に頼らなくてもロボットにやらせられる。大したシステムもいらない。要はロボットを含むハードを簡単で効率的に動かすソフトウエアと、ハードに作業手順を教える「ティーチング」の問題なんだ。

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