生産現場のロボット化と自動化を支援するウェブマガジン

2020.11.06

連載

[お嫌いですか、ロボットは?#5]触らぬ神にたたりなし

きらびやかに輝く都会の片隅にたたずむ1軒の老舗バー「王道」。
システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)の次長・たにがわじろう行きつけのバーで、酒を酌みながらふと思い出す昔ばなし。酔った勢いで、他では語られない業界の裏話はまさに実話。アブナイ話も所詮は酔っ払いの戯れ言。悪しからず。


たにがわじろう……SIerの次長。機械商社で産業用ロボットを導入した自動化の経験を買われ、10年前に新設されたSIerにヘッドハントされる。入社以来ずっと次長のまま。52歳のバツイチ。

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――いらっしゃいませ。
マスター元気? いやあ、今週も疲れたわ。

――えらく目が充血してますね、声もガラガラ。大丈夫ですか?
 朝からウェブミーティングが3件続いてさ。パソコンの画面越しに話すんだけど、表情が見えづらく反応が分かりにくいから、どうしても画面を凝視しちゃうんだ。目は充血するわ、声を張り上げるわでまいっちゃうよ。

――いつものでいいですか? ジャックソーダで。
 うん、頼むわ。レモンをぎゅっとしぼってね。え~っと、今夜のおすすめは「うずら卵の神フライ」って、すごいネーミングだね。フライの神様か? 神と言えばあれを思い出すなぁ。自動車部品を加工してた工場の件を。8年前、いや10年前だっけなぁ。リーマン・ショック後に、景気がV字回復し始めた頃だった。マシニングセンタ(MC)にワーク(被加工材)を自動供給化する、ロボットの投入にしては基礎的な案件だったなぁ……………。

 三重県内でも愛知県寄り、桑名市にある部品加工の会社で従業員は10人足らず。2代目社長の佐々木さんは経営に明るく、設備投資にも熱心だった。9年前の、たしか11月だっけなぁ。ロボットを真ん中に、旋盤とMCをくの字に並べワークを自動供給する仕組みを依頼してきたんだ。段取りさえ整えておけば、終業後にも加工を続けられるから、経費を差し引いた分だけ増益になるってね。

 最初は自分1人でロボットの導入の段取りを整えようとしたんだけど、うまくいかなかった時の事を考えて思い直し、ウチの会社に頼んできたんだ。機械商社勤めの時からの縁もあったからねぇ。声が掛かったときはうれしかったよ。

 システム自体は特段難しい話じゃなく、すぐに構築できた。その程度のロボット導入だから、案件全体の値段だって大した事はない。3カ月ごとにシステムを1組ずつ増やして、1年後には旋盤とMCのシステムは4組まで増えた。稼働時間も徐々に伸ばしたから、利益だって確実に積み上がった。佐々木社長は周りの町工場から「ロボットの神」とあがめられた。

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