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2019.07.19

連載

[ロボットが活躍する現場vol.4] 自動化した後に「改善」! 生産性を80%アップ【後編】/旭鉄工

0.1秒単位の改善の積み重ね

直交ロボットの動作スピードを0.1秒単位で短縮する

 生産数や設備の停止時間、CTのデータを収集したら、次はそのデータを基に改善に取り組む。シフトフォークの生産ラインでも、停止時間の削減やCTの短縮を目指し、さまざまな改善を進めた。

 例えば、組み付けのラインでは直交ロボットを使って「ピークパッド」と呼ばれる樹脂部品を供給するが、直交ロボットの動作スピードを0.1秒の単位で速め、動作ストロークをミリ単位で短くした。
 18年11月~19年2月までの4カ月で、こうした0.1秒単位の改善を計80件実施した。34個の改善でCTを従来の15.4秒から11.7秒に短縮した。また、46個の改善で設備の可(べき)動率(設備を動かしたい時に正常に動く状態の割合)を67%から95%にまで高めた。

 これにより、1時間当たりの生産数を従来の160個から288個にまで大幅に増やした。目標は1時間当たり277個だったので、改善を通して目標を10個以上上回る生産数を実現した。木村社長は「0.1秒の改善を一生懸命積み重ねることが大事」と強調する。

切削加工ラインの垂直多関節ロボットにもさまざまな改善を施した

 一方、ファナックの垂直多関節ロボットが活躍する切削加工ラインでも、さまざまな改善を施した。

 組み付けラインと同じように、垂直多関節ロボットの動作スピードを0.1秒単位で速めた。ロボットを動かす軌跡も見直し、無駄な動きをできる限り省いた。
 「システムインテグレーター(SIer、エスアイアー)は仕様通りの設定でロボットシステムを納入する。だが、安全面などの観点から、ロボットの動作スピードなどには余力を持たせており、必ずしも0.1秒の単位で最速を追い求めているわけではない。そのため、当社ではSIerが構築したロボットシステムをそのまま使うのではなく、改善できるポイントには改善を加えたうえで活用する」と木村社長は説明する。

 切削加工機も同様に、刃物を送るスピードを0.1秒単位で追求した。こうした改善活動を繰り返し、18年9月時点で129個だった1時間当たりの生産数を19年3月には169個に増やした。比率にして34%高めた。

ロボット道場を設置

西尾工場内に設置した「ロボット道場」

 IoT技術を使ってロボットラインを改善したことについて、木村社長は「ロボットは決められた速度と精度で動くため、人の作業を改善する時に比べて成果がより分かりやすく、はっきりと出る」と語る。改善の成果が明確に分かることは、従業員のモチベーションにもつながるという。

 もちろん、同社の改善活動はこれからも続く。組み付けラインは生産数の目標を達成できたため、今後は切削加工ラインの改善活動を重点的に実施する。

 こうした改善活動を進めるうえで課題になるのは、ロボットを操作できる人材を育成すること。0.1秒単位でロボットの動作スピードを追求するには、ロボットの知識が必要であることは言うまでもない。
 そこで、西尾工場内に「ロボット道場」を設置し、従業員がロボットの操作を練習できる環境を整える。まだ完成には至っていないが、すでに数人から「使いたい」との声が上がっている。今後は道場も有効に活用し、社内のロボット人材の底上げを図る。
 また、生産性を高めたいと考える企業に対し、自社の生産ラインでの経験を踏まえた改善提案にも取り組む考えだ。

――終わり
(ロボットダイジェスト編集部 桑崎厚史)



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